強烈な匂いで他人を圧倒して縄張りを守るというのは
対人恐怖の話に結びつく
力が強いとか知恵があるとか
あるいは大声が出るとか匂いが強いとか
そのあたりで縄張りの確保の力に差ができて
食糧確保の力に差が出る
それが集団内での順位とかかわってくる
順位が確定して劣位になると
赤面したり冷や汗が出たり
動悸があったり食欲がなくなったり
場合によってはメスのポジションを取ったりなどして
それ以上闘争して資源を浪費することを回避する
動物の場合には
赤面のサインが合理的なもので
自分も周囲もそのサインに従えばいい
人間の場合には
生物学的に判定が出て
その結果としての赤面があるとしても
それで終わりではない
社会的な要素が強いわけで
生物学的な結論だけに従う必要はないはずだから
赤面を隠して
相手に劣位を知られたくないと考えることもある
そんなわけで赤面恐怖が成立する
ーー
もちろんそれだけではなくて
生物学的に優位なのにもかかわらず
赤面が出る場合があり
それは誤信号というべきである
信号伝達系に誤りがあるのだと思うが
そのような誤りに悩む人の数が多いとは考えられないだろう
こんなにも多くの人が同じ悩みを悩んでいるのは
もっと理由がある
ーー
昔からの考えで
対人恐怖のひとは相手が怖くておびえているのではなくて
相手に優越したい気持ちが過剰に強いのだと指摘される
それは上の考えとよく一致する
生物学的に劣位に立つことを肯定できずに
何とかしたいと思うのだから
優越への意志は強いはずである
あっさりと劣位を認めることができない
認めて、赤面も、劣位の結果なのだと受け入れれば合理的である
それをしたくないのはまだどうにかできると思っているからだろう
ーー
これも昔の人の考えで
匂いだけではなく
自分から考えが出てしまい、相手に察知される事態もある
思春期妄想症とか自我漏洩症候群という
これは匂いや考えが
相手を
不快にする
ことが苦しいのであって
社会的優位や劣位を言ってはいない
不快にするというのは
微妙な話で
不快にするからこちらが優位に立てる側面もあるし
不快にするからこちらが劣位に立つ側面もある
非常にすばらしい考えや匂いが漏れて出てしまうのならば
悪いことではないはず
漏れ出て困るのは自分にとって悪い情報である
その結果として相手に嫌われる
ここまでは分かる
しかしそれにとどまらず相手に迷惑をかけると悩むのである
ーー
自分にとって不利な情報が漏れて相手に嫌われる
ここまでは劣位に立つ危機で説明できる
それが相手に迷惑をかけると転化するところが興味深い
自分が臭くても変な考えをしていても
相手は自分から遠ざかればいいだけのことで
特に悩むほどのこともない
不快は遠ざかれという信号なのだからそれでいいはずだ
しかしもう少し複雑らしい
ーー
匂いで言えば
現代日本人は匂いを消すためにいろいろと努力しているわけで
このあたりが
相手に迷惑をかけるという感覚のひとつの現れだと思う
嫌われたら困るという考えのようだ
匂いで圧倒するとは考えない
匂いで嫌われるから縄張りを守れるとは考えないようだ
ーー