長寿の習慣

免疫 まじめすぎると低下 乳酸菌摂取で向上も ヘルシーリポート
2010年6月12日 
ヘルシーリポート:免疫 まじめすぎると低下 乳酸菌摂取で向上も
 長生きの秘訣(ひけつ)は何か。一つは、がんやウイルスと闘う免疫力の維持といってよいだろう。では、どんなライフスタイルが免疫力を上げるのか。「『まじめ』は長寿を縮める 『不良』長寿のすすめ」(宝島社新書)の著者でもある奥村康・順天堂大医学部特任教授(免疫学)が東京都内のセミナーで講演した。そのアドバイスに耳を傾けてみたい。
 「まじめな人ほど早死にする」が奥村さんの持論だ。まじめ過ぎると自分で何でも抱え込み、手が抜けない。小さなことにくよくよし、気持ちの切り替えができない。やがてストレスがたまり、病気になる。つまり、まじめ過ぎると免疫力が落ちる。
 その良い例がフィンランド症候群だ。1970年代、フィンランド政府は比較的裕福な40-45歳の男性1200人を二つのグループに分け、一方は健康管理をしっかり行い、もう一方は何もしないようにし、どちらが病気が少なくなるかを15年間追跡した。
 健康管理をしっかりするグループは定期的に健康診断を受け、血圧の高い人は降圧剤などで治療した。さらに塩分や砂糖、アルコールの摂取を控え、運動も行った。一方、何もしないグループは好きなものを食べ、飲酒や喫煙も自由にした。
 15年後、意外な結果が出た。なんと健康管理をしっかりと行ったまじめグループの方が死亡率が高く、自殺や心臓病なども多かったのだ。奥村さんは「健康管理にあまりにも神経質になると逆効果。いいかげんにやっている方が免疫力が高まったのではないか」と推測する。
 何事もほどほどに楽しみ、気楽に過ごすのがよい。調査結果は忙しい現代人へのそんな戒めかもしれない。
 ■NK細胞
 免疫力を維持する上で大事なのが、NK(ナチュラルキラー)細胞の働きだ。NK細胞はリンパ球の一種で、体外から侵入したウイルスを撃退したり、がん細胞を殺す働きをする。
 人の体内では1日に約1兆個の細胞が生まれ変わり、そのうち5000個前後が、がん化するなど出来損ないの細胞になる。こうした出来損ないを撃退するのがNK細胞だ。NK細胞の働きが高いと、がんになりにくい。
 奥村さんはこれをマウスの実験で確かめた。NK細胞のないマウスを実験用に作り出し、死ぬまでの経過を見たところ、がんが多発することを確かめることができた。動物実験を裏付けるように、人間でもNK細胞の活性が高いとがんになりにくいとの研究報告もある。
 NK細胞の働きは朝起きてから徐々に高くなり、夜11時を過ぎると低くなる。深夜まで起きて仕事をしていると、活性度合いは落ちる。このため奥村さんは「深夜から朝方まで勤務する昼夜逆転の勤務形態は、NK細胞の活性を低くする」と指摘する。あまりにも厳格な生活は良くないが、かといって昼夜逆転の生活も、健康を損なってしまう。
 また、NK細胞は精神的なストレスに非常に弱い。例えば受験生はテスト前になると活性が下がりやすく、風邪をひきやすくなる。こんな時は、細かいことにくよくよしないこと。友達と会って楽しく話し、気晴らしに好きなものを食べ、よく笑う。そんな過ごし方がいいようだ。
 ■R-1乳酸菌
 食べ物でも、NK細胞の活性を上げるとされるものがある。キノコや納豆、ヨーグルトの乳酸菌などだ。
 明治乳業食機能科学研究所の池上秀二研究員によると、R-1乳酸菌を含むヨーグルトをマウスに与えたところ、NK細胞の活性が高くなった。人を対象とした試験も行われている。山形県舟形町と佐賀県有田町で59-85歳の住民計142人に、同種のヨーグルトを1日90グラム、8-12週間食べてもらい、食べない群と比べた。その結果、ヨーグルトを食べた群は食べる前より風邪をひくリスクが低下したことが分かった。
 さらに、インフルエンザウイルスに感染させたマウスに同種のヨーグルトを食べさせた実験では、ウイルスが減るなど感染リスクを低下させる作用もあった。
 池上さんはこのメカニズムについて「乳酸菌とその菌が作り出す多糖類がリンパ球の一種のT細胞に働き、T細胞が作る生理活性物質(インターフェロンガンマ)を介して、NK細胞が活性化するのではないか」と推測する。
 ヨーグルトには腸の働きを整える以外にも、さまざまな効用があるようだ。
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 ■奥村康教授が勧める長寿の習慣
 (1)よく出歩く
 (2)ゲラゲラよく笑う
 (3)夜更かしはしない
 (4)細かいことは気にしない
 (5)何でも、ほどよく食べる
 (6)夫婦仲を良くするなど異性に関心を持つ
 (7)適度に運動する
 (8)趣味を持つ
 (9)腹を割って話す友達を持つ
(10)ヨーグルト、納豆などの発酵食品やキノコをよく食べる