20年の報われない愛のプレゼント

この20年にわたって
妻の誕生日と結婚記念日とクリスマスにはプレゼントを続けてきた。
だから60回分のプレゼントのメニューができあがった。

わたしは自分の好きな衣装を妻に着ていて欲しいので
衣装を必ずプレゼントの中に入れる

フォーマルな感じはハロッズが多く
普段着はポール・スチュアートが多い
たいていはウィンドウに飾ってあるものを買うことにしているので、
妻としては、あらかじめ、今シーズンはこれかなと分かるようで、
小物を先回りして用意してあることもある

最近はポール・スチュアートに
和風の何かを添えて着ていることが多いと感じている

特にポール・スチュアートの柔らかな明るい色合いで
単純ですっきりしたフォルムの洋服は
私が大好きなもので
それを着ている妻の姿も大好きで
多分、中身よりも、洋服の方が好きなときもあるかもしれない

避暑地でポール・スチュアートを着た妻が
小型犬に引かれて散歩から帰ってくる様子を
小屋の窓から眺めていると私は幸せである

こうしてみると
妻の誕生日が冬ではなく、さらに結婚記念日が誕生日ともクリスマスとも離れているせいで、
私は年に三回もプレゼントをしていることになる

誕生日は自分では選べないから仕方がないが、
結婚記念日は選べるのだから、
それを誕生日とクリスマスとは別のシーズンにするといいようだと
後輩にはアドバイスする

妻の場合は、冬、春、秋にプレゼントが巡ってくる

最近は妻は妻で忙しく
お互いにベッドで寝顔を見て
病気じゃないようだと安心しているようなところがある

勝手な時間に起きて寝ているし
だいたいは別々に外で活動しているので
話をする時間がない
話をしても本当にいいたいことは専門的すぎてお互いによく分からない

一緒に食事をすることもまれである
最後の食事は何だったか
ゴルゴンゾーラチーズのペンネだったような気がする
そのときの妻の下着についてははっきりと記憶がある
クリスマスのプレゼントに贈ったものだった

手料理などはもちろんここ数年食べたことがない
私はひとりぶんしか作らないし作れないし
妻はたいてい外食してくるから
食事に関しては完全にすれ違いである

妻は外食に関して寛容である
私は外食すると、いったいこれはどんな料理人がどのようにして作ったものかと考えて
いっそ自分で作った方がいいと思ってしまう
その点で不寛容である

清潔強迫の延長で
食材のどんな細かな問題点も見逃さない
取り替えてもらうと謝罪の意味でカードをくれたりする
おかげでレストランのサービスカードなどがずいぶんたまった

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