聖マリ医大、研究費の不正使用で学長を解任 科研費など1185万円で百貨店の商品券を購入

聖マリアンナ医科大学は3月3日に記者会見を開き、公的研究費の不適切な使用があったとして、2月25日付けで学長の吉田勝美氏を解任したと発表した。

 吉田氏本人は、記者会見場に姿を見せなかったが、大学の説明によると、同氏は大学の調査委員会からの再三の辞任要請を拒否。学長を解任された現在も、教授職(予防医学教室)は続けているという。

 公的研究費の不適切な使用が発覚したきっかけは、08年11月に行われた会計検査院による検査だった。2件の公的研究費について、不適切な経理処理があることを指摘された。

 うち1件は、吉田氏が受け取っていた03年度と06年度の厚生労働科学研究費に不適切な経理処理があったというもの。もう1件は、難病治療研究センター教授らの03年度の私立大学等経常費補助金特別補助に、不適切な経理処理があったというものだ。

 指摘を受けて大学は、昨年12月1日に調査委員会を発足させ、03年度以降、公的研究費を受けた152人の研究者を対象に、研究費の使用状況について調査した。吉田氏へのヒアリングも2回実施したという。ちなみに調査委員会は、大学の理事など大学関係者が7人、大学の顧問弁護士1人と税理士1人の9人で構成され、第三者は含まれていなかった。

 調査の結果、特に問題視されたのが、吉田氏が研究費で百貨店の商品券を購入していたことだ。吉田氏は、03年度、05年度、06年度に受け取った疫学関連などの厚生労働科学研究費等の一部、合計1185万円を消耗品の名目で商品券の購入に充てていた。

 そのうち、約半分の商品券は研究室の金庫に保管されており(既に大学が回収)、数十万円分はソフトなど備品を購入した際の領収書が見つかったものの、残りの五百数十万円分の商品券は見つからず、事実上、使途不明となっている。理事の青木治人氏は、この商品券購入について「私的流用がなかったと、はっきり言うことができない」としている。

 このほかに判明した不適切な使用は、難病治療研究センター教授と難病治療研究センター助教授(当時、現在は医学部教授)、医学部准教授の3人が03年度以降に使った研究費、約3500万円分。ただし、この研究費は、教授らが業者に一時的にプールさせ、翌年度に研究試薬などの消耗品の納入を受ける“預け金”だったことが判明しており、「領収書などがあり、私的流用はないと確認している」(青木氏)。

 既に大学は、これまでの調査結果を会計検査院、厚生労働省、文部科学省に報告。2月25日に、臨時教授会、評議会、理事会を開催し、吉田氏を学長から解任することを決議した。学長代行を務めている理事長の明石勝也氏は、「現在は、大学全体にショックが広がっている。まずそれが落ち着くのを待って、早ければ3カ月後には次期学長を決めることになるだろう」と話している。

*****
ドーピングコントロール委員会の青木治人委員長(聖マリアンナ)が記事に登場ししている。

*****

研究補助金で商品券 聖マリ医大不正 

理事長ら謝罪

 川崎市宮前区の聖マリアンナ医科大で、国の補助金約4700万円が不正使用された問題で、同大の明石勝也理事長ら理事・執行役員5人が3日午後、学内で記者会見し、大学の責任を認めて謝罪する一方、国の処分を待って、問題に対応する方針を明らかにした。また、2月25日付で、明石理事長が学長代行に就任したことを明らかにした。

 明石理事長らは午後4時から、同大の難病治療研究センターで記者会見を行った。冒頭、明石理事長は「国民の税金である公的研究費を大変、ずさんに管理し、監督不行き届きがあった。お騒がせして申し訳ない」と謝罪し、5人は深々と頭を下げた。

 発表によると、不正使用は、会計検査院が昨年11月18~21日に行った公的研究費の検査で指摘され、発覚した。このため同大では翌12月、青木治人理事を長として、弁護士や税理士も加わった9人の調査委員会を発足させ、学内調査を開始した。

 会計検査院から指摘されたのは、厚生労働省から支給される「厚生労働科学研究費補助金(科研費)」と、文部科学省所管の事業団から支給される「私立大学等経常費補助金」で、調査の結果、関与していたのは、吉田勝美前学長ら、医学部の教授3人と准教授1人とわかった。

 吉田前学長は当時、学長就任前で、経理上「消耗品の購入」として科研費など計1185万円分で商品券を購入していたという。これら商品券のうち、583万円分は学内に保管されているのが見つかったが、602万円分の使途は確認されておらず、
吉田前学長は「業者への謝礼に使った」と説明したという。

 また、他の3人は計3538万円で、対象年度に使用すべきなのに翌年度に消耗品を購入しており、これらの使用については領収書などで確認されたという。調査委員会の青木委員長は「教授ら3人の私的流用はなかった」と説明した。

 吉田前学長は昨年4月に学長に就任したが、問題発覚で「教員を統括する立場としてふさわしくない」として、2月25日に臨時教授会の承認を得て、理事会と評議員会を開き、解任を決議したという。

(2009年3月4日  読売新聞)