入社2年目のA子ちゃんは一流大学卒。学生時代には海外留学の経験もあり、TOEICでは常に900点前後のスコアを叩き出します。そのほかにもさまざまな専門知識や資格を持っていることが彼女のセールスポイントです。
入社前は自慢の英語力を遺憾なく発揮して、海外で華々しく活躍する姿を夢見ていたA子ちゃんですが、まずは3年間の期限つきでコーポレート部門に配属されました。会社側としては、ここで仕事の全体像を覚えてほしいという意図があったのですが、彼女は地味な下働きを極端に嫌い、やりたくない仕事には目もくれず、とにかく何に関しても「おいしいとこ取り」ばかりしようとします。
そのほかにも、感情の起伏が激しく、不満をすぐに顔や態度に表し、周囲の人を困らせたり、やたらと権利ばかりを声高に主張し、場の雰囲気を壊します。
人の好き嫌いも激しく、言いづらいことはすべてメールで済ませ、都合が悪くなると「わかりません」「私にはできません」「それは無理です」と目をむいて言い放ち、自分がやるべき仕事を投げ出してしまいます。
尻ぬぐいをしている指導員役の先輩社員はたまったもんじゃありません。
ただし、これらの本性は、役職つきの社員の前では絶対に見せることはありません。しかも、困ったことに、取り入るのは巧妙で、上の人たちからのウケは抜群にいいのです。
A子ちゃんは人事権を握っていそうなお偉方に会うと、派手な身ぶり手振りを交えながら、必ずこうアピールします。
「私の強みは、ずばり、この英語力です。この会社に入ったのは、海外を舞台に大きな仕事がしたかったからです。入社3年目のジョブローテーションのときには、海外部門に配属されることを強く希望しています」
ところが、日々接している先輩社員の本音は、こうです。
「お前は、英語以前の問題だ」
自分は優秀で人気者だから何をやっても許されるなどと甚だしい勘違いをしているA子ちゃんのような「俺様社員」が、あなたの近くにいませんか。
やたらと自己主張が強い「俺様社員」がいる一方で、こんな消極的な若手社員もいます。
指示待ち体質のくせに、まともに指示に従わない(従えない)社員です。
積極的に意思表示をしないため、心の中で何を考えているのかさっぱりわかりません。こちらが明確な指示や命令を出しても反応が鈍く、何を聞いてもハッキリした答えが返って来ず、常に曖昧な態度を取ります。些細なことでパニックに陥り、思考停止になることもしばしばです。
また、気に入らないことや都合の悪いことが起こると、すぐに体調を崩し、何の罪悪感もなく、いとも簡単に会社を休みます。
それでも、3年近くの年月を費やし、根気強く育成し、ようやく戦力になりかけた頃に、初めて自らの意思で発言するのです。
「ずっと思っていたのですが、やっぱり辞めます」
課のメンバーは、きっと、こう思うでしょう。
「なにが『やっぱり』だよ!」
礼節もわきまえた優秀な若手社員がいる一方で、このような問題社員ばかりが目立ってしまう悲しい現実があります。このように意識と能力の差が激しい若手社員の育成は、一律に対応できない部分が多く、なかなか一筋縄ではいきません。以前にも増して手間と時間がかかるようになりました。
自分のことは棚に上げ、不満だらけの若手社員
(1)客観的に見て、明らかに本人に問題があるのに、自分のことは棚に上げて、上司や会社に対する不満を延々と話し続ける人。
(2)自分が今後どんなキャリアを積んでいきたいかなど、本人のビジョンが明確になっていない人。
(3)自分を客観視できず、自己認識が乏しい。なのに、自分以外は事細かに観察し、経営者気取りで悟りきったような理屈や批判を並べ立てる評論家タイプ。
彼らは、こぞって上司を「頭が固くて柔軟性がなく、チャレンジ精神に乏しい」と批判していましたが、私からすれば、その言葉を彼ら自身にかけてあげたかった。
若手社員の研修とインタビューの最中に、「ビジネスリーダーの皆さん、今まで現状をよく知りもせず、言いたいことばかり言ってしまい、本当にごめんなさい」と、私は何度となく心の中でつぶやいていました。
ビジネスリーダーの皆さんは、日々、本当に大変なんだなと実感したのです。