ネットいじめ(cyberbully: サイバーブリー

「ネットいじめ(cyberbully: サイバーブリー)」の加害者および被害者は、ともに身体的にも精神的にも問題を抱える可能性の高いことが、フィンランドの研究で明らかになった。この調査では、ネットいじめの加害経験のあったティーンエイジャーは7%超、被害経験は5%、両方の経験があったのは5.4%で、米ミシガン大学(アナーバー)准教授のMatthew Davis博士によると、米国でも状況は類似しているという。この研究は医学誌「Archives of General Psychiatry(一般精神医学)」7月号に掲載された。

ネットいじめは、携帯電話、パソコン(電子メールやFacebook)などの電子メディアを通じて、相手に対して攻撃的な行為を意図的に繰り返すもの。今年(2010年)1月、米マサチューセッツ州の15歳の少女が過酷なネットいじめを苦に自殺した事件が広く報じられ、米国でこの問題に対する注目を集めた。いじめや子どものインターネット利用の安全性に関する親たちの関心も高まってきているという。

今回の研究では、トゥルクTurku大学のAndre Sourander博士らが13~16歳のフィンランドのティーンエイジャー2,215人を対象にデータを収集。ネットいじめの加害および被害経験のほか、全般的な健康状態についてたずねた結果、被害経験のあるティーンは、家庭崩壊、情緒、集中力および行動に問題のある比率が高く、他人との付き合いが困難、頭痛、腹痛、睡眠障害になりやすい、学校で安心感を得られないという傾向があった。

一方、加害者自身にも情緒、集中力および行動の障害、他人との付き合いの困難、多動や素行問題が多くみられ、喫煙や飲酒、頭痛、学校で安心感を得られないという傾向も強かった。加害および被害の両方の経験のあるティーンエイジャーには、上記のあらゆる問題が認められた。

従来のいじめは主に学校で起こるため、少なくとも家にいるときは安心できるが、ネットいじめでは被害者は24時間休みなくリスクにさらされており、不安感がさらに強まる可能性が高いと研究チームは指摘している。

米ニューヨーク大学(NYU)小児研究センターのRichard Gallagher氏は「ネットいじめには学校、親および子どものいずれにも原因がある」との考えを述べており、「学校が積極的にいじめ対策を行う必要があるほか、いじめに気付いた第三者が学校に報告することも有効である」と指摘している。別の専門家は「ネットいじめの元となるのは主に学校での友人関係である」と指摘するとともに、「ネットではデータが残ることが対策上、1つの利点となる」と述べている。