今日は普通の物忘れと認知症の物忘れとどこが違うかという話をした
わかったようでわからなくてこれを理解するにはかなりの知力が必要だ
ーー普通のうつ、つまり普通の喪失体験とか普通の悲哀とうつ病のうつとはどう違うのかも問題になる
これも微妙な話で難しいところがある
ーーとても簡単に割り切っていうと症状のカタログそのものは「場所」の病理である
脳血管障害でも外傷でも変性疾患でも言語中枢が機能停止すれば言語に障害が出る同じように複視になったり、感情障害になったり,記憶障害になったりする
ーー一方,症状の「経過」は病理の性質を反映している
脳血管性のものならば急に始まって回復するにはどのくらいかかるとか外傷ならばもちろん傷を受けた時から激烈に始まるし癌だったら徐々に進行して転移があると新しい症状が始まったりする変性疾患ではおおむね徐々に始まり不可逆性の変化を残すこれはたとえばプリオンとかクロイツフェルト・ヤコブのようなスローウィルス系のものとかに似ている点もある統合失調症について、胎児期や出生期に感染して20年かかって発症する感染症と考えればつじつまの合う部分もないでもない
ーーどこで起こっているかと何が起こっているかを区別しようという提案でこれは案外穏やかな提案だと思う
ーー「場所」の病理についていえば、その部分での機能障害が発生するわけであるが,脳は,その部分で機能を発現していると同時に,それよりも下位の部分を(おおむね)抑制的にコントロールしているわけだし,それよりも上位の部分の(おおむね)抑制的なコントロールを受けて,下位機能ユニットとして作動している
だからそれらが一体として機能停止になるわけでそれらが混在するのであるから、鑑別するのは容易ではないしかし不可能でもない
このモデルは脳血管障害のリハビリのモデルが元になっているのだがたぶん基本的にはうつ病でも統合失調症でも間違っていはいないと思う
ーーここまで前置きをして置いてうつ病のうつは「場所」の病理であると考えられる普通の悲哀反応とか普通の喪失反応は脳全体にびまん性に広がる体験であり場所をと特定できないのではないかと思う
昔の話,脳血管障害や脳梗塞のあとでのうつ症状を検討して,脳の障害の場所とうつ症状の責任部位を関係付けようとした研究があったしかしそのうち立ち消えになった
つまり、うつ病になる原因病巣は見つからなかった運動性失語とか感覚性失語とかの中枢のようには見つからなかったのだ
これは何を意味しているかといえばうつ症状は脳の局所の病理ではなく,全体を巻き込んで起こる特殊な病理変化でありだいたい1ヶ月程度で始まり,回復には6ヶ月から1年程度かかる典型的な場合にはすっかりもとに戻り欠損を残さないしかし反復再発傾向は明らかにある
というような病理である
血管,代謝,変性,外傷,感染,先天性、新生物,遺伝子,どのタイプまたはどのタイプの組み合わせがうつ病の経過を一番良く説明するかが問題なのだ
ーーDSMの症状のカタログは「場所の病理」であって病理の本質ではないことは明らかなのだ
ーー普通のうつとは、のうが頑張った後のうつであり、疲弊性である。統合失調症のあとでも、そう状態のあとでも、疲弊期がおとずれる。それがうつである。
このうつとも失恋のうつと親が死んだ時のうつは同じかといえば、これは同じだと思う
同じでない「うつ病のうつ」きはどのようなものかということになる。
それが精神病の精神病たる特殊性で,脳神経は,「精神病性の特殊な変化」を受けるのである。血管性でも新生物でも感染でもない。
だから精神の構造が変化するような変化が生じるのである。
ーーしかしその「変化」については詳述できない。これがジレンマである。
ーーDSMは真理を会議で定義しようとしている。ガリレオの昔から、真理は実験によって判定されるもので、会議で決められるものではない。会議(とその前後の活動)で決められるものは政治である。
ーーどちらかといえば統合失調症は潜伏性の発病準備で、そのあとはなだらかなレベルダウンで,変性疾患タイプだろう。だからこれを早発性痴呆といい,早発性の変性疾患と定義したのは正しい感じがする
うつ病は半年か1年で回復することを考えるとたぶん反応性の病態である。
むしろこれを引き起こす統合失調症、そう状態、などが問題で統合失調症は前述,そう状態は発症年齢その他を考えても統合失調症と似た病理なのだろう。
つまり統合失調症と躁うつ病と並べる方式は間違いで,統合失調症と躁病が対応関係になり,うつ症状は両者のあとの疲弊状態である。
アキスカルの躁とうつの混合具合もなぜ躁うつ二元論であるのか納得が行かない躁一元論でいいはずだろうと思う
ーーマラソンを走ったあとに筋肉痛になる問題は筋肉痛ではなくマラソンを走ることだろうマラソンを走れば筋肉痛は多少は仕方がない
マラソンも走っていないのに筋肉痛になったらそれはうつ病によるうつである。
ーー「マラソン」つまり直前の「がんぱりすぎ」がうつの引き金になる
そして「直前の頑張り」がないのにうつ症状になったとすれば、それがうつ病のうつであって「がんばり」のないあとのうつである。
頑張りがあったあとのうつはうつ状態だけれどうつ病ではない。ただ疲れただけである。
ーーただの疲れとうつ病のむ疲れは精神の構造が違うのでそしてその事情を言葉で明確に伝えることは現状では難しい自転車の乗り方の完全マニュアルはあるのかもしれないがそれよりもう少し難しい精神科病院に10年入ればわかる何かだ