孤独は伝染する
孤独な人は孤独な仲間を引き寄せ、他人も孤独にすることが、医学誌「Journal of Personality and Social Psychology(性格と社会心理学)」12月号で報告された。研究著者の1人である米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)教授のJames H. Fowler氏によると、「孤独は人から人へと、3人先まで拡大する。つまり、ある人について何も知らなくても、その人の友達の友達が孤独であることを知っていれば、その人が孤独になるかどうかを、偶然を超える確率で予測できる」という。
今回の研究では、孤独が伝染するだけでなく、孤独な人たちが小さな集団として孤立する傾向があり、その集団の中で孤独感が増大していくことも判明した。データからは、平均的な人は1年に約48日孤独を感じるが、孤独な人には常に孤独感がつきまとうことが示された。さらに、孤独を感じている人は数年後には友達がいなくなるか、絶えず友達を失い続けている可能性が高いこともわかった。
Fowler氏らは、米国立加齢研究所(NIA)の支援により、フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)の最初の参加者の子孫に当たる5,100人強を対象に、2~4年にわたり継続的な友人関係のパターンを追跡するグラフを作成。その結果、孤独である日数が1週間につき1日増えると、近くの友人の孤独も同様に増えるきっかけとなることが判明。さらに、近くの友人同士の会う機会が減るため、孤独がコミュニティ全体に拡大した。女性は男性よりも孤独に感染しやすいこともわかった。
米デューク大学(ノースカロライナ州)教授のMark R. Leary氏によると、この孤独の伝染は、生活様式が周囲の人に似るためである可能性があるという。「孤独な人に接している孤独でない人は、やや否定的に行動することで、同じネットワーク内の他の人を少し孤独にする可能性がある。おそらくこれが3人先まで孤独の影響がみられる理由である」と同氏は述べている。
Leary氏によると、孤独な人を救うには、孤独な人と接する人が、内向的な態度は孤独の表れであり、無関心、嫌悪、拒絶ではなく、つながりを求めていると認識し、手を差し伸べることが必要であるという。また、Fowler氏は「精神医療に従事する人であれば、患者だけでなく患者の友人にも働きかけること。雇用者なら従業員が互いに社会的なつながりを持てる活動を強化すること。家族の場合は、家族間の連帯を助けると同時に、自分自身のネットワークにも気を配るべきであることを意味する」と付け加えている。