町田康「告白」

考えてみれば俺はこれまでの人生のいろんな局面でこここそが取り返しのつかない、引き返し不能地点だ、と思っていた。ところがそんなことは全然なく、今から考えるとあれらの地点は楽勝で引き返すことのできる地点だった。ということが今俺をこの状況に追い込んだ。つまりあれらの地点が本当に引き返し不能の地点であれば俺はそこできちんと虚無に直列して滅亡していたのだ。当然ことはこんなことをしないで済んだと言うことで、俺は今正義を行っているがこの正義を真の正義とするためには、俺はここをこそ引き返し不能地点にしなければならない。