私たちが他人を観察していて、
その人らしいなと思う時、
それは具体的な物質であるよりもむしろ、
特定の行動傾向とか癖とかの、
いわば、その人らしさを創出している特定のアルゴリズムだ。
その人は、何種類かのアルゴリズムでできている。
無限種類ということはない。
遺伝的に保持している脳回路の中で、
成育の過程で有効と判断された回路が発動している。
有効との判定はしばしば間違っていて、
それが強迫性障害などの症状となって現れたりするけれども。
だとすれば、
生活の中の、どの場面でどのアルゴリズムを適用するかの、
メタ-アルゴリズムがある。
そこが大事なアルゴリズムで、
それをセルフ・アイデンティティと名付けている。
脳回路の比喩でいえば、
個々のアルゴリズムは、下位サブルーチンである。
それらの上に、状況判断アルゴリズムが乗っている。
状況判断アルゴリズムは適切な下位アルゴリズムを指定して、
行動や思考を起こす。
この、上位に位置する、状況判断アルゴリズムが、
高次脳機能と呼ばれる部分で、
少し前の心理学用語でいえば、セルフ・アイデンティティに重なることになる。
自己同一性という翻訳はひどい。仕方がないけれども。
個別のアイデンティティを統合しているのが
セルフ・アイデンティティだということはもう少し強調されてもよいことだろう。
だから、自己としての統合性に関係している。
integrityの問題である。