倫理的な検索エンジン

ポルノやアルコールなどから信者を遠ざけようと、キリスト教やユダヤ教、イスラム教などの宗教的倫理観に即して検索結果を限定するフィルター的な役割をもつ検索エンジンがインターネット上に続々登場している。
 そのひとつ、オランダ・アムステルダムに拠点を置くイスラム・サイト、「アイム・ハラル(I'mHalal)」の創設者、レザ・サルデハ(Reza Sardeha)氏(21)は次のように語る。「ほかの検索エンジンは『なんでもあり志向』が強すぎます。どぎついコンテンツや、ポルノグラフィーのような不道徳なウェブサイトに出くわすことがない安全な検索ソリューションを提供したかったんです」
 例えば「アイム・ハラル」で「アルコール」と入力して検索すると、飲酒に関するイスラムの観点を説く検索結果が表示される。また「ポルノグラフィー」で検索すると、検索結果には何も表れない。
 サルデハさんはクウェート出身。新サイトはパキスタン、インドネシア、マレーシア、アラブ首長国連邦(UAE)といった国からのアクセスのほか、米国からもアクセスがあると言う。「実際には、このサイトのユーザーはイスラム教徒だけではないんです。安全な検索エンジンで有害なコンテンツが出てくる心配もないから子どもに使わせている、といった内容のメールを、週に1度はイスラム教徒でない人からもらいます」
■キリスト教、ユダヤ教の信徒向け検索エンジンも
 一方、米コロラド(Colorado)州コロラドスプリングズ(Colorado Springs)で、キリスト教の検索サイト「シークファインド(SeekFind)」を立ち上げたシェイ・フードマン(Shea Houdmann)氏は同サイトについて、「キリスト教福音主義の観点から、聖書や神学に関連するコンテンツを探したい人のための検索ツールだ」と言う。
 一見、グーグル(Google)に似た検索エンジン、「ジュオーグル(Jewogle)」はユダヤ教徒の利用を念頭に置いたものだ。
■背景に新しいタイプの信者の登場が
 検索エンジン業界に関する情報サイト、サーチエンジンランド・ドットコム(SearchEngineLand.com)の編集長ダニー・サリバン(Danny Sullivan)氏は、こうしたサイトはどれも今のところ「すごく人気を博して」いるわけではないが、「だからといって実のあるビジネスにはなりえないということではない」とみている。
 ただし、こうしたニッチ市場をターゲットとした検索エンジンの中には、親会社インターアクティブコープ(InterActiveCorp、IAC)によって閉鎖されてしまったアフリカ系米国人向けの検索エンジン「ラッシュモアドライブ(rushmoredrive.com)」のように、失敗に終わるものも少なくはないと言う。
 一方、こうしたニッチ市場を相手にした検索サイトが、インターネットに新たなユーザーをもたらしていると、IT関連の市場調査会社アルティメーター・グループ(Altimeter Group)の共同経営者、マイケル・ガーテンバーグ(Michael Gartenberg)氏は、米公営ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR、National Public Radio)で語った。
 同氏は「(宗教も)テクノロジーを活用したがる世代、文化になってきている。彼らは検索エンジンやそこから得られるものを活用したがっているが、同時に自分たちの文化の伝統に忠実で、自分たちの信仰体系から外れないものを求めている」と分析している。