高齢者の老化を遅らせる食生活指針

 15年前から秋田県南外村(現・大仙市)の高齢者約1,000名を対象に介入研究を行っています。栄養改善のための食生活手段の実行可能性、有効性、安全性を検証するための取り組みです。この結果、介入プログラムとして展開された食生活指針が高齢者の栄養改善に有効なことが実証されています。そこで用いられた食生活指針とは、次のとおりです。
〈高齢者の老化を遅らせる食生活指針〉
 1.欠食は避ける。
 2.動物性タンパク質を十分に摂取する。
 3.魚と肉の摂取は1:1程度の割合とする
 4.肉は、さまざまな種類を摂取し、偏らないようにする。
 5.油脂類の摂取が不足しないように注意する。
 6.牛乳は、毎日200ml以上飲むようにする。
 7.野菜は、緑黄色野菜、根野菜など豊富な種類を毎日食べる。
 8.食欲がないときは特におかずを先に食べ、ご飯を残す。
 9.食材の調理法や保存法を習熟する。
 10.酢、香辛料、香り野菜を十分に取り入れる。
 11.調味料を上手に使いおいしく食べる。
 12.和風、中華、洋風とさまざまな料理を取り入れる。
 13.会食の機会を豊富につくる。
 14.かむ力を維持するため義歯は定期的に点検を受ける。
 15.健康情報を積極的に取り入れる。
(※熊谷 修 他、日本公衆衛生雑誌 46.1999)

 この指針を活用した介入を4年間つづけた結果、アルブミンとヘモグロビンが有意に増加し、老化の遅延が確認できました。この指針の有効性が実証できたわけです。さらにこの指針の有効性を高めるツールとして考えたのが主菜・副菜を構成する10食品群を選び、その摂取頻度で多様性を評価する方法です。「肉類」「魚介類」「卵類」「牛乳」「大豆・大豆製品」「緑黄色野菜」「海草類」「いも類」「果物」「油脂類」の食品群ごとに、食べていれば1点を加算し、簡単に得点付けができるようにしました。10の食品群を毎日摂取していれば10点になります。この得点は高次生活機能の障害リスクを予測することも確認されています。ぜひ栄養改善ツールとして活用してみてはどうでしょう。