いい思い出はいい残し方をしないとつらい
男女というものは3,4年であとは続かないのが現実であるが
住宅ローンと育児という二大借金を抱えて
身動きができなくなる
二つの借金が終わった頃には
何をする気もない
燃えかすが残る
あしたのジョーは燃え尽きて白い灰になる
もちろん住宅は大切
子供は生きがいそのものである
その一方で白い気持ちもあるのである
仕事で何か業績と言えるものを残せる人も数少ない
必要としたりされたりして
それが日常生活のむき出しの無意味さに麻酔をかける
仕事中毒
アルコール中毒
人間関係への配慮
極端な肥満
200を超える高血圧
などは麻酔の一種である
醒めるのが怖いので何種類かの麻酔を用意する
仕事中毒と
アルコール中毒と
人間関係への配慮を併用すれば
ほぼ醒めることなく生きていける
生きていくことにもともと意味はないのだから
それでも特に支障はない
妻として夫の家に行く時におみやげに関して妥協できない性格
駅ビルのシュークリームくらいで妥協する気分になれない
他人というものは無限の配慮を要求する
いちいち応えることで乗り越えようとする途方もない努力
生まれついての性分というもので
どうにも仕方がない
いい思い出だけで充分だと妥協することはできないものかと思う
たとえばの話、夫が急死すればたぶん、ずっと思い出とともに生きるのではないか
生きているのに手応えがないから、なおさらつらいのだ
ピッチャーが投げているのにバットを振ってくれないバッター
なんにも分からない
しまいにはピッチャーが嫌になる