ポンコツ研究日記~悩める産婦人科医のブログ~というブログで、以下を見つけた。
自分のために採録。
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代理母に関するトラブルシューティング
テーマ:医療問題:代理母問題
代理母について、もうちょっと考えてみます。
代理母に興味をお持ちの方、ぜひ一緒に考えてみてください。
考える材料として例をあげてみました。
まず、一番困るケースから。
1) 代理母が出産後、児を自分の子供であると言い張ったらどうしますか。 現状の民法のままでは、
産んだ母が実の母となってしまいます。 また、逆のケースとして卵子提供を受けて出産したら、卵子
を提供した女性から「私がその児の遺伝上の母だから、自分の子供である」と言われたらどうしますか。
2) 代理母が出産後、実の父母が児を受け入れなかったらどうしますか。特に、児に先天奇形があった
り、実の父母の生活環境に変化があった場合には、そういったケースも考えられます。その際、誰が責
任をとるべきでしょうか。
代理母を誰にすべきか。
3) 代理母を決定する際に、
① 代理母は血縁か、非血縁どちらが望ましいのでしょうか。
② 代理母を引き受けてもらうための説明の責任の所在は、誰にあるのでしょうか。
③ 血縁者に無理やり代理母になってもらいましたが、妊娠分娩に伴う合併症が起きてしまいました。
誰が、どのように補償しますか。
④ 血縁では自分しか生殖年齢の女性はいません。家族からのプレッシャーが強く、受けざるをえな
い状況ですが、本当は受けたくありません。どうしますか。
代理母の妊娠分娩
4) 代理母の妊婦検診、入院、分娩等の医療費、さらに妊娠分娩産褥にわたっての生活費等、どこまで
負担すべきでしょうか。また、途中で、実の父母の経済的な問題が発生して費用の負担ができなくなった
ときは、どうすべきでしょうか。
5) 代理母のリスクがどの程度なのかの正確なデータはわかりませんが、ふつうのお産では250件に1件は命に関わる重篤な合併症を伴うと言われています。高齢出産であれば、なおのこと。。。
① その現実を考慮したとして、具体的に誰を代理母にするのが望ましいと考えますか。
② 重篤な合併症が 発生してしまった場合、特に代理母が死亡したり後遺障害を負った場合、誰が
どのように補償すればよいでしょうか。
③ 重篤な合併症を起こした代理母の家族が、実の父母や医師、病院を相手に訴訟を起こしたら、どう
しますか。
6) 重篤な合併症を除いても、妊娠中はさまざまな合併症が考えられます。具体的には、
① 代理母が切迫早産になり、長期の入院が必要になりました。入院費や入院中の補償等(仕事がで
きない家事ができないことに対して)はどう考えますか。
② 代理母が重い妊娠悪阻(つわり)になりました。非常につらいため、中絶したいと言っています。
③ 代理母が前置胎盤になり、輸血や血液製剤の使用が不可避でした。その結果、肝炎になってしまいました。
④ 代理母が前置胎盤になり、帝王切開をしましたが、出血がコントロールできず、子宮を摘出すること
になりました。
⑤ 代理母が子宮外妊娠になり、卵管を切除しなくてはならなくなりました。
⑥ 代理母が産後うつ病になってしまい、自殺未遂をしました。
②~⑥のようなケースになったら、どう対応し、どう補償すべきですか。
子供について
7) 児の先天異常について、可能性が考えられます。
① 超音波検査の結果、染色体異常の疑いがあります。しかし、代理母は羊水穿刺(子宮に針を刺し、
羊水を少量採取して検査する)を嫌がっています。どうしますか。
② 羊水検査の結果、染色体異常が明らかになりました。実の父母は中絶を希望しました。しかし、
代理母は拒否しました。どうしますか。
※中絶は、今の母体保護法で、強姦された場合か、母体が健康上、経済上妊娠を継続できない場合に
のみ、認められています。児の異常での中絶は認められていません。
③ 超音波検査の結果、重大な先天異常があることがわかりましたが、中絶できる時期を過ぎていました。
④ 妊娠中は異常を指摘されていなかったのに、出生後重篤な先天異常を合併していることがわかりました。
⑤ 先天異常の治療に莫大な治療費が必要なことがわかりました。
③~⑤が判明した後、実の父母は児の受け入れを拒否しました。どうしますか。
残念ながら、今の風潮だと、健康な子供しか欲しくない、とか、子供の異常は代理母のせいだ、とか主張する父母が出てくることが予想されます。
8) 児が成長後、代理母からの出生だったことを伝えるべきですか。(知る権利はあると思います)それは積極的に?それとも、そういった希望があったら?
会いたいといったら会わせるべきでしょうか。
また、真実を知った子どもに誰がどのようにカウンセリングすべきでしょうか。
未知のリスクについて
9) 今の医学では明らかにはなっていませんが・・・
① 将来、代理母で産まれた子には重篤な合併症があることがわかったら、どうしますか。
② 将来、代理母に重篤な合併症があることがわかったら、どうしますか。また、その治療に莫大な費用が発生するとしたら。。。
とりあえず、私が思いついたのはこんなところ。
以上のことについて、それぞれは決してそんなに頻度が高いものではないでしょう。
しかし、起こっても不思議ではないことを挙げてみました。
代理母を強く熱望している患者さんがいらっしゃるのはわかります。
しかし、代理母を推進するのであれば、これらをはじめ思いつく限りのトラブルについて暫定的でも
すべてルールを決めておかなくてはなりません。
10か月(採卵、受精等を含めればそれ以上)という期間は決して短くはありません。
人の気持ちが変わるのに、十分すぎるくらいの期間。そこに、妊娠分娩という命をかけた人生の大
イベントがあるわけですから。。。
そんなこと難しく考えなくたって、海外と同じようにやればいい。といわれるかもしれません。
確かに、代理母が海外でうまくいっているのですが、日本では難しいのです。
なぜなら、契約というものに対する意識が日本人は甘いから。。。
今のままでは、きっと何かあるたびに訴訟沙汰になってしまう。しかし、法に則った判断しかできない
司法は、これらのことについて適切な判断ができるとは思えません。そもそも、司法で白黒をつける格好にするのであっても、代理母のルールを法に組み込まなくてはならないわけで。。。
結局、誰も解決できない。
そして、一番困るのは当事者同士がもめている間、児は宙ぶらりんになること。下手すると、施設行きですもの。
正直、私もこれらについてどのようにすればうまくいくか見当がつきません。
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最初のスクリーニングでウィンドウズピリオドだったりして、児に感染症が移っちゃったりした場合に、代理母にひきとり責任とか違約金とか賠償金言われたら困らないかな~。。。。
確かに、国民の半数以上は代理母に賛成しています。
ただ、それはあくまで代理母に伴うこういった現実的な
問題点を知らせずに、選んだ結果であって、
本来はこういった点まで、きちんと説明したうえで、
決を採るべきだったと思います。
産婦人科医の中にはそれを確信犯的に無視する人たちがいます。
そして、その後ろにはこういった問題点を知らずに
無邪気に支持をする一般の人々がいます。
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▽死亡の危険性のある妊娠・出産を第三者に課す問題が大きい
▽胎児への影響が不明
▽「家」を重視する日本では強制や誘導が懸念される
▽本来の生殖活動から大きく逸脱している
▽胎児に障害があった場合の解決が当事者間の契約だけでは困難
これら5点はいずれも難しい問題。
さらに言うならば、
無事児が産まれた後、児と代理母と遺伝上の父母の間に禍根を残さないか
という点もあると思います。
上記の2点目およびこの点に関しては、特に結論が出るまで時間がかかる問題です。
ということで、少なくとも、某クリニックの院長先生がおっしゃるように、
「患者さんが希望してるんだから」という理由だけで、見切り発車するのはおかしい。
そんなことを言ってしまったら、クローン人間を作っての臓器移植とかだって
「患者さんが希望していれば」OKになってしまうわけで。。。
医療技術だけ進歩すれば、なんでもできちゃう。
やはり、線引きはどうしても必要になってくるわけで、
生殖技術も、このあたりで線を引くべきなんでしょう。
この話がけっこう厳しい結論に落ち着いた背景には、一連の薬害肝炎問題の影響があったかもしれません。薬害問題のように、不妊医療もいつどんな副作用が出るかわかりません。医学の進歩や症例の積み重ねによって、わからなかったことがわかることはよくあること。特に、不妊医療関連はその後の経過は長いわけですし、その影響は絶大ですから。。。
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代理母が親権を主張した時には、実の母=DNAで親子関係を認めることになります。
DNA鑑定で親子関係を認めることになります。
そうなると愛人の子=非嫡子も親子関係を要求できるようになります。
一夫一妻制の崩壊につながります。一妻多夫制、一夫多妻制につながります。
自由恋愛の横行、古き良き家庭生活の崩壊につながります。
近代の民法の精神を覆すことになると思います。
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新自由主義的に、経済的・政治的自由は最大認めろと言うなら、
経済的にゆとりのある人間が、何人妻・夫を持とうが、何人子供をもうけようが、
自由だということになるだろう。
他人の権利を侵さず、公共の福祉を妨げなければよいだけなのだ。
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潜在的な一夫多妻と顕在的な一夫多妻と、どちらが害が大きいのだろう。
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現在の日本の妊産婦死亡率は出生10万あたり1桁で推移していますが、母体が大量出血などで生命の危機に晒されるのは出生250に1件(10万あたり400件)と高率です 。アカの他人に押し付けて許される率ではありません。
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細かく契約を交わすことで解決できる部分も多い。
DNAだけを基本に考えることになるだろう。
金銭については、保険会社の契約と結びつくだろう。
しかし例の細かすぎる字の疾病保険契約のようなもので、
すぐには理解できないような、複雑なものにならざるを得ない。
「代理母保険」が売り出される。いくつものランクで。
感情の問題は、契約で抑えきることができない。
韓国ドラマが好んで題材にしそうである。
裕福なことと子供を産めることは、現在でも強い相関が強いけれど。
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子供たちの人生のことをどれだけ考えたのかという論点はあると思う。
その人生は子供たちが選んだ人生ではない。
どこかでこっそりと代理母に産んでもらって、こっそりと戸籍を届ければ、
問題なく、実子として受理されたかもしれないのに、
そうしなかったことは、子供には異議があるかもしれない。
その場合、まだ言葉を持たない者の異議申し立ての可能性を尊重しなければ
ならないのではないかと思う。