かんぽの宿評価額、不適正鑑定で大幅減額か 最大95%

 日本郵政グループが宿泊施設「かんぽの宿」を安く売ろうとした問題で、2007年の不動産鑑定評価が国の基準に違反していた可能性が出てきた。基準では経営改善の努力をした想定で評価しなければならないのに、安く売るために「赤字」と断定し、積算した価格から最大95%も減額していた。国土交通省は担当した不動産鑑定士20人以上から近く事情を聴く方針だ。

 かんぽの宿は05年に民間売却が決まった後、07年の不動産鑑定評価で突然、評価額が前年のほぼ3分の1の計約98億円に下がった。これは、評価額を出す際、土地・建物の価格を示す「積算価格」から大幅に減額したためだ。

 07年の鑑定評価書では、鑑定した3社のうち、38施設を担当した東京の不動産鑑定会社が24施設を積算価格から80~95%も減額していた。関係者によると、07年8月に当時の日本郵政公社から「経営改善を見込む必要はない」「この価格では受け入れられない」と指摘され、一部を80~95%減額した。だが、さらに公社から「億を超える施設は売れない」「もう少し厳しくみてほしい」と言われ、減額の施設を増やしたという。

 この鑑定会社は前年の決算などから23施設を「赤字」、1施設を「低採算」と判定。売れにくいとして減額率を高くした。同社の関係者は「郵政の条件はおかしいと思ったが、契約先なので断れなかった」と、事実上減額を指示されたと受け止めたという。

 国交省の不動産鑑定評価基準では、評価額は「対象不動産の最有効使用を前提とした価値判断」などで決めるとされている。会計検査院の今年3月の報告では、かんぽの宿は客室稼働率が民間旅館の平均を10ポイントほど上回る約70%あり、高い人件費などを削れば、黒字になる可能性を示している。鑑定士でもある立教大の久恒新(ひさつね・あらた)教授は「かんぽの宿は人件費も物件費も高く、改善の余地が大きい。現状が赤字だからと言って、単純に赤字と見なすのは鑑定評価ではない」と指摘する。

 総務省は「(公社の指摘は)値下げの圧力で、不自然に価格が落ちた。売りやすくすることをねらった可能性がある」と問題視している。日本郵政グループは朝日新聞の取材に対して「鑑定士が公正に判断した」と文書で回答し、引き下げを指示したとは認めていない。同グループは不動産評価を見直しているが、結果は公表していない。(松浦新、座小田英史)