各人が知っていることだけを、書いてくれればいい

「われわれにとって必要なのは、自分で訪ねたことのある土地について正確に話してくれる地理学者である。しかし地理学者はわれわれが見たことのないパレスチナを見たという優越感から、世界の他のあらゆる土地についても知ったかぶりの特権を振り回そうとする。私はこのことばかりでなく、他のあらゆることにおいても、各人が自分のしっていることを、しかも知っていることだけを、書いてくれればいいと思う。ところがこういう人がそのわずかばかりの知識をひけらかそうとして、自然学の全般にわたる書物を書こうと企てる。この欠陥からいろいろな大きな不都合が生じるのである」(第一巻、第31章,食人種について)

モンテーニュ