大学の先生が10年くらい前に書いたもの。
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学生たちの悩み方がかなり違ってきたという印象をもっている。その印象の中心は「自己愛的」ということである。かつてのスチューデント・アパシーも遡ってみれば自己愛の問題をはらんでいたといえるが、最近来談する学生の多くは、他者の存在を実感できず、自己愛的な空想の世界を生きているようにみえる。
現代の日本の社会では、子どもたちは、身体を通じた手触りのある体験や規範や伝統を伝えられるよりも、親の自己愛の延長として期待され、「過保護に」育てられる傾向があるように思われる。少子化がこの傾向を助長しているとも思われる。そして、科学技術の進歩やエンターテイメント産業の肥大化は、子どもたちから「歯ごたえ・手触り」の体験を奪い、バーチャル・リアリティの体験ばかり提供している。幼児期からテレビゲームやビデオが当たり前のものとして普及したのは、今の大学生の年代からである。その一方で、微妙な「甘え」を察知し合う文化が過去のものになりつつあるということも、自己愛の病理の増加に関係があるだろう。現代の親子関係は、ひどくべったりした相互依存関係か、ものを介した情緒に欠けた関係が多くなってきているようにも思われる。こうした状況の中で、子どもたちは自己愛的な空想の世界に閉じこもるようになっているようにみえる。
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ますますそんな感じがする。
大人から見れば、携帯やネットなどの使用そのものが
非常に閉じこもり傾向で自己愛傾向と見える様子だ。
子どもは目の前にあるものに適応しているだけなのだけれど。
学校の先生に「君たちは自己愛的で、過保護で、バーチャルで、消費文化的で」などと説教されても、
ではどうすればいいか、家に帰ってネットで検索するのだろう。