チャン・ツィイーが1人3役。
第一部は1930年代の上海。写真館の娘、茉は、スカウトされて華やかな女優の世界へ飛び込むが、
これからという時に妊娠。
娘三代に渡る恋愛と出産の年代記。
私の心と波長が合ったのは、第一部。
男も第一部の男が一番いい。
そして一番悪い。
映画で、映画の世界を描くという自己言及。これはいつもうまく行くパターンだ。
今回もうまく行っている。細部にわたり本物を描けるからだろう。
イタリア映画でニュー・シネマ・パラダイスがある。
ジャスミンのことを歌った歌。
にょろにょろと絡むようで、なんとも中国ジャズ的だ。
このねっとりする感じは革命前の上海に一番似合うと思う。
蜂蜜のように絡む。
チャン・ツィイーの中国語はとても好きだ。
声の質が好きなのかもしれない。
チャン・ツィイーの母親役をやった人は、ジョアン・チェン。
銀色夏生とかその娘に似ている感じがした。
「あばずれ」という言葉が字幕に出ていて、
新鮮だった。
「あばずれ」。いまどきの女に当てはまらないのは、
いまどきの女はもっとずれているからだ。
チャン・ツィイーのオーラ。これはオーラとしか言いようがない。
たいして美人と思わないが、
目の表情がくっきりと強く、
顔がくるくると変わり、
体全体に表出が激しい。
絵を撮る人がうまいのだとも思うが、被写体もいいのだと思う。
整形でも作れる美人ではなく、北欧にたくさんいる美人ではなく、
感情と物語を表現する力である。
筋肉の一本一本まで、神経がつながっている感じ。
もともとダンス歴が長いらしいが、
特殊技能女体という感じがする。
「(わたしを)そんなに視ないで」というせりふがあるが、
それは無理というものだ。
最後のあたりのシーンなど、体当たりそのもので、これはすごい。
ジャッキー・チェンも体当たりかもしれないが、
こちらも体当たりだ。
茉と莉、そして花。特に莉(リー)という名前が好きだ。梨もいいし、李もいいが、莉もなかなかいい。
ジャスミンというイメージもとてもいい。くっきりしていて、あいまいさがない。
でも、日本といえば桜、という感じで、すこし陳腐で入門的な感じはする。
チャン・ツィイーを使うのだから、何かもう少し熟成させて欲しい気もする。
紹興酒のように複雑に発酵させて欲しい。
髪に挿したいけど
摘むのが怖い
と歌う
運命って、そういうところが、ある。
来年も咲いて欲しいから
と続けて歌う
男たちは薄く登場するだけ
女の話である。
脚本は一流とはいえないと思う。
しかし、人間の現実は実際こんな程度で、たいした話もないのだとも思う。
だからこれでいいのかもしれない。
作りすぎていないともいえるだろう。
人生も、要約すればこんなもの。
枕とパジャマが同じ模様の、細かい花のプリントで、
わたしはいとも簡単に胸をきゅんきゅんさせている。
衣装さんの感覚と波長が合う。
音楽さんとはあまりあわないかもしれない。
映像処理さんとはとても感覚が合う。凝っている。
脚本さんとは合わない。
それにしても、なぜいままでこんなチャン・ツィイーと出会わなかったのだろう。
世の中にこんな美しさがあるのだと知る。
北京ダックを食べたときみたい。
わざわざ皮をねえと思うが、食べてみないと分からないものだ。
北方東洋女性の美しさ。
体の表情というか、指先までの動きというか、
この人はだらしないところがない。
よくコントロールされている。
アスリートみたいに。
昔、チャン・ツィーが黒柳徹子のインタビュー番組に出た。
昼ごはんを食べながらで、最初は興味がなかったけれど、
背中を全面的にオープンにした衣装で、
カメラさんは後ろから、その輝く背中を存分に映していて、
これが女優の背中だと見せ付けて、
そのときから、わたしはチャン・ツィイーの名前を見ると、
その映画を観るようになった。
この人の出る脚本はたいしたものではない。
そんなにいい役は回ってこない。
でも、素材としてのチャン・ツィイーはやはり抜群だと思う。
写真よりも、ビデオよりも、映画に向いている。
作りこむ映画監督に惚れ込まれるのだと思う。チャン・イーモウ。
だから、今回、映像としてはとても美しい。
監督はかなり凝り性の人なのだと思う。
今回と同じ、チャン・イーモウ監督の映画『初恋のきた道』が一番よかったと思う。
監督とも仲のよかった時期で、女優としても、新鮮かつ
勝負してみたいとの気迫があったときのようだ。
グリーン・デスティニー、SAYURI、オペレッタ狸御殿とつまらない脚本が続いている。
でも、脚本がつまらないだけ、
チャン・ツィイーは被写体としてのみ、振舞うことができて、
いいのかもしれない。
この人のダンスだけしばらく見ていたい気もする。
わたしは、この人は、ヒップ・ホップダンス向きではないかと思う。
チャン・ツィイーのヒップ・ホップダンスを15分くらいでまとめて、プロデュースしたいものだ。
凝って作りこんでみたい。
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ビデオのリモコンがないので、
やむなくリアルタイムで視た。
夜に流れていた「私の頭の中の消しゴム」は
とてつもなく間延びしていて、
いろいろやることもあって、
視ていられなかった。
数分視ているうちに、暇くさいと思った。
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リモコンなしでも、ビデオ1で映る設定なのだが、どうしてか絵が出ない。
面倒なので、しばらくビデオなしだ。