春苑 紅爾保布 桃花 下照道爾 出立嬬

春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つをとめ
春苑 紅爾保布 桃花 下照道爾 出立嬬 — 巻十九・4139

嬬 の字を当てているのか
爾保布 と万葉仮名をあてている

この歌は、音楽といい、絵といい、やはり出色である。

レフ板をあてられて撮影しているようなものだろう。

春の苑 桃の花 おとめ とズームアップしているフレームの運動がある

春の苑は緑で
桃の花は桃色で
おとめはおとめ色である。
色の運動がある。

おとめの着ている服の色は、
#DB5960。

下照道爾 は
昔から 下照る道に と上から読み下しているが
これは日本語なのだろうか

立つ乙女

出で立つ乙女
の違いも何と言っていいのか分からない
なんとなくだが、出現した!という感動がある
ここにも運動の感覚

緑の春の苑が広がって
桃の花が下の道を照らしている
そこに出現したあなた

意味を超えた音楽だ

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大伴家持「春愁三首」についても万葉仮名を収録すると

春の野に霞みたなびきうら悲しこの夕影に鶯鳴くも
春野尓 霞多奈伎 宇良悲 許能暮影尓 鴬奈久母

我が屋戸のいささ群竹吹く風の音のかそけきこの夕かも
和我屋度能 伊佐左村竹 布久風能 於等能可蘇氣伎 許能由布敝可母

うらうらに照れる春日に雲雀上がり情(こころ)悲しも独りし思へば 
宇良宇良爾 照流春日爾 比婆理安我里 情悲毛 比登里志於母倍婆
— 『万葉集』巻十九・4290〜4292。

最後の字が
母、母、婆。
有名な春の苑が嬬。
何か意図的なものだろうか?