西本願寺の修復の話で、
瓦の下の梁には曲がった松の木が36本使われていた。
ちょうな桁といわれる屋根の端の部分。
32本を取り替える必要があるが、曲がり具合が少しずつ違う。
この曲がり具合に合う木を探す。
まっすぐに伸びた木よりも、曲がった木のほうが強い。
根曲がりの木のほうが年輪が複雑で、いろんな方向から風や雪の力が加わり、強い木になる。
根曲がりの木を使うのは民家にも取り入れられ、雪深い五個荘の村の合掌作りにも取り込まれている。
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というような話だったけれど、
正確に言うと、
根曲がりの木は、強くなるのではなくて、
強い木だから、根曲がりの状況でも残ったという説明になる。
厳しい環境でも生き抜いているので強さがある。
いろいろな力にさらされてもしっかり生えているのだから強いことは証明されている。
風雪にさらされて強い木になる
というのはなんとなく生きる教訓になるけれど
「強い木になる」というより「強い木だけが生き残る」というべきで
そうすると
弱肉強食のようであまり人生の教訓として好ましいものでもなくなる
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実際人間の性格形成においても
逆境が人を磨くと言うよりは
逆境「にもかかわらず」生き抜いた人間が強いのだということになる
とすれば
やはりぬくぬくと生きた方が楽だし楽しいだろうと思う
人生で苦労なんてしないほうがいいと思いますね
できることなら
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とはいえ、どの人の人生も逆風の連続であり
多かれ少なかれ耐える人生になる
だから耐える必要のあるときには耐えよう
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問題は耐える力や逆境に抗する力がそれぞれに違うことだ
木の話にしても
根曲がりの木とまっすぐな木を同居させて使えば
うまくいかないのではないだろうか
同じ話で
ぬくぬくとまっすぐに育った人間と
苦労して厳しく育った人間とは
一緒にいても何となくそりが合わないし
仕事をしても夫婦になっても
いずれ食い違いに悩むことになるだろうと思う
その意味では
貧乏人同士と金持ち同士が
パートナーになるほうが摩擦が少ないだろう
摩擦が生じたときに損をするのはたいてい貧乏人のほうだから
その点は覚悟しておいたほうがいい
金持ちはいつでも自分たちが正しいと思っているし
社会もそう認める
貧乏人は逆境に耐えてきたのであるが
その厳しさが嫌われるのだ
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貧乏から努力して世間に認められた男と
生まれたときからの金持ちの女が
パートナーになることは珍しくない
そのとき男性の側で価値観を押しつけないことだ
あくまでも相手の女性は
お姫様であって自分と同じ価値観や忍耐を押しつけてはいけないのだと
いつまでも忘れないことである
しかしそれが実際の生活では難しい
日々の生活はやはり価値観の妥協が求められる
だからアドバイスするが
お金持ちのお嬢さんはお金持ちのお坊ちゃんをパートナーにするのがよい
根曲がりの木なんてそりが合わないに決まっているだろう