精神病の薬にも進歩がある。
セレネースとかリスパダールの頃は、
ドーパミンレセプターのなかのD2レセプターにどのくらい特異的かなど、競っていた。
いわゆるフル・アゴニスト。
また、認知機能の改善を宣伝していた頃もあり、セロトニン系への作用もあると言っていた。
ところがエビリファイになると、パーシャル・アゴニストだから有用だということになる。
エビリファイは初発の統合失調症の人に使うとよいといわれている。
発売当初は陰性症状に対する薬という感じで、
陽性症状に急速にブレーキをかけるものではないと言われていたものだったけれど、
最近は、最初からエビリファイ一本でいったりする。
ジプレキサが切れ味がいいけれど、糖尿病のことがあり、安心して使えるわけではない。
セロクエルはぐっすり眠れて、好きな人も多いのだけれど、これも糖尿病が心配。
その点、エビリファイは安心できるし、肥満しなくていい。
使い方は、ハロペリドール時代と似ていて、
多少の副作用が出始めるくらいまで、
やや早めに飽和させる感覚だ。
多少のイライラが出るまで使うけれど、
イライラが出たところで多少のベンゾジアゼピンかバルプロ酸を併用すればよい。
急性期が過ぎたら、維持量まで低下させる。
プレ・シナブティック・レセプターと
ポスト・シナブティック・レセプターのそれぞれについてどのように
くっつくか、そして離れるか、
スーパーセンシティビティ(アップレギュレーションのことと考えていいのだろう)とも関連させて
説明されている。
たとえば、マウスで、音を聞かせて、そのあと床電流という不快刺激を流す。
かわいそうなマウスは、音を聞くだけで不快に感じるようになる。音におびえる。
そのように条件づけるとして、アンフェタミンのようなものを使うと、
音への過敏反応が生じる。
少しの音ですごく不快に感じるらしい。
ストレス脆弱性の成立と考えられる。
その不快感を減少させるには、セレネースもエビリファイも有用なのだが、すこし違いがある。
セレネースはプレ・シナブティック・レセプターにぴったりくっついて、
ドーパミンを増大させたままにさせる。
一方でポスト・シナブティック・レセプターはアップ・レギュレーションで
スーパーセンシティビティが成立しているのだが、
ドーパミンもポスト・シナブティック・レセプターも増大したままで、
ぴったりフタをされているらしい。
だから何かの加減で薬を忘れたりすると、
大変なことになる。
エビリファイは逆で、
ドーパミンを減少させ、
パーシャル・アゴニストなので、
ポスト・シナブティック・レセプターもさほど増やさずに、
安定させ、過敏反応がなくなるらしい。
セレネースを使用中の患者さんにエビリファイを追加すると、
エビリファイのほうがくっつきがいいので、
セレネースがくっついているレセプターに替わってくっついて、
しかもパーシャル・アゴニストとして作用するので、
陰性症状が固定しないということらしい。
すごい物質を見つけたものだ。
しかし決定版ではなくて、
すでに次のターゲットはグルタミン酸受容体との流れになっている。