銀座の雪 ロナセン

今日は経団連で国際会議。
車も運転せず、タクシーも使わず、地下鉄で行ってみることにした。
マスクをして歩くとなかなか温かい。

地下街を歩けばいいだけなので楽だった。
途中いろいろな掲示物があり、楽しかった。

頭を空っぽにしている吉永小百合さんとか。

丸の内線はホームにドアがついていて、事故がおきないように改良されていた。
一体いつからだろう。知らなかった。

経団連にたどり着き着席する。
放送が流れ。雪のせいで、関西や、その他の地方からの人の到着が遅れている、
しかしメインは最後のほうなので、
最初の話からとりかえず始めるとのことだった。
実際席は埋まっていなかった。
3時から始まり、5時くらいにはかなり埋まっていた。年配の方が多い。
名札を見ると、東北とか四国とか遠い人もいた。

話の概要は、新薬と各種レセプターとの親和性の問題、それにまつわるいくつかの話題など。

「ロナセン」(ブロナンセリン)にも「ルーラン」にも、盛りだくさんの話題を用意したため、
密度の濃い時間。

英語で発表があっても、、スライドの意味がきちんと理解できていればついていけるのだが、
なかなか難しいものもあり、大変。

連休中の食事の買い物もしたかったので、
パーティは省略して、銀座に向かう。
思ったよりも大雪で、大きな雪の結晶である。

こんな日は銀座の煉瓦亭に並ばずに入れるかもしれないと思い、
何年ぶりかで行ってみたところ、
思い通り、すぐに入れた。

スパゲッティナボリタンが目に付いて、他はともかく、
ここのナポリタンはおいしいと分かっているので、注文したら、今日はもう終りとのことだった。
終りと言うよりも、職人さんが雪で出てこられないのではないかと思った。

仕方がないので、別のものと思い、さほど迷わず、
エビピラフと、いつもの、ポークカツレツ。
チキンピラフは、チキンの皮と、皮のいぼいぼがあまり好きでないので、
敬遠するが、エビビラフト、かにピラフは、どちらもいい。
たまねぎを炒めて、そのあとご飯とマッシュルームの輪切り、そしてトマトケチャップ、
アミノ酸系の味は強くはない、魚介類のソースの元といった感じも強くない。
一番は、たまねぎの甘みである。しゃきしゃきしていて、しかし固すぎず、甘い。
これは至福である。たまねぎを炒める技のようだ。
テーブルにあった白胡椒を少しだけかけてみるが、
小さな穴であり、焼け石に水である。
わたしは本来ならもっと胡椒をかけそうだが、
これはこれで完成された味なのだと納得できる。

やや遅れて、ポークカツレツ。
これはその日によって出来が違うので、安心してもいられない。
今日のカツは、よかった。100点。
この肉の味、厚み、ジューシーさ加減、塩味、そしてあげている油の味、
どれもこれも、わたしの好みで、
これと同じカツを作る女がいたら、
わたしはそのことだけを理由にしてその女と暮らすだろう。

もちろん、カツにはソースなどかけない。そのままの味。
キャベツはかなり細く切ってあるので、これも何もかけないでも、味が充分に出て、おいしい。
キャベツは細かく切ると、甘みが出る。

この味が好きと言うよりは、この味で育ってきたのであって、
好きのきらいのといえた義理ではない。
長い間には職人さんが変わったりもしているはずだが、
現在の煉瓦亭の味は、一時期をのぞいて、また安定期に入ったような気がする。

給仕は相変わらずアルバイトで、進歩なく、それでいい。
太宰の頃、「アルバイトの女給」と言っていたものくらいの、
古さである。

わたしも銀座の隅っこで店を開いているのだから、
煉瓦亭くらいを見本にして、
日々研鑽を怠らないようにしたいものだ。

支払いをカードでお願いしようとしたら、断られた。
なんとかポケットから探して、事なきを得た。
そういえば、昔から、カードは扱っていない店だったような気がする。

いいことだ。
カードを使うだけで、店の利益が5%落ちてしまうのだから。
客としては、現手金で払ってあげたら、意気というものだ。

むかし、コップの水の中に、台所によくいる虫が入っていて、
苦情を言ったら、食事はただにしてくれないで、
500円のテレフォンカードをくれた。
テレフォンカードというのが、実に、悲しいくらい昔だと思う。
少しは価値が出ているのだろうか。
今も持っている。