ビンテージ・ホスピタル

携帯をひとつ持って
都内のあるビンテージ・ホスピタルの最上階のレストランに座っている
高級というほどでもないが
安くもない

腕に採血か点滴のあとのシールを貼り付けた女性
一人で食事を取っている
検査のための絶食のあとかもしれない

多分標準体重の5パーセント下くらい
皮下脂肪が白く輝いている

あまり病気には見えない
研究目的で献血でもしたものか
よく分からない

健太郎さんが言っていたが
貴種の女性はそれはやはりすばらしいものなのだそうだ

genital phenotype として
抗し難い魅力があり
したがって子供が出来てしまい
隠し子になったり
こっそりと実子になったり
いろいろなトリックがあって
そのような遺伝子は
貴種の中にはかなり入り込んでいるらしい

その人とゆっくり話をしようとかも思わないし
心が通じるとも思わない
価値観や人間観とかそんなことでもないし
バイオリンに誘いたくもない
でもときどき無性に会いたくなるのだと
彼は言う

考えてみれば、
父、自分、息子と並べて比較してやはりよく似ている
母のはよく知らないが妹と妹の娘はやはりよく似ている

男性の場合はY遺伝子が決めているのだろうから
理屈としてもよく分かる

女性の場合はXXでどちらの由来のXが
genitalなものを決定しているのかよく分からない

娘はXXで
Xのひとつは母由来で問題ない。
もう一つのXは父由来で、それは父方の祖母から来ている。
だから娘は母に似るか父方祖母に似るか半々ということになるのだろうか。
そのあたりが分からない。
母と娘はよく似ているように思うと
健太郎さんは言う。
だから、多分、母由来のXは父由来のXよりも優位なのだと思う。

優性遺伝劣性遺伝という言い方があるが
母由来のXは父由来のXに対して優勢なのではないかと思うが
どうだろう
父方のおばあちゃんよりは母親に似るのではないかと思うが

父が自分の配偶者に自分の母に似た女性を選ぶことも傾向としては考えられるが
genitalな領域でそのような選択が働いているとも考えにくい。

まあそんなことを考えながら
夕刻を過ごしていた

そのあとひどい雷になった