義経の絶望

義経が腰越まで行って頼朝に会うこともなく京に帰される事になり失望する。
そのくだり。

馬上、ゆらゆら、義経は疑った。
腰越このかた、自分はどこか違って来てはいないだろうか。
この人間がである。
人間の観方、骨肉への考え方、世間というもの、すべてへ、
自分は何か、以前のように純真ではなくなったような気がする。

窯から生まれたままな白磁の肌が、縦横なひびをうけた感じである。
寒々しい絶望感が、心の割れ目へ忍び入ってくる。