摂食障害、「食べなさい」と強いず安らぎ与えて

摂食障害、「食べなさい」と強いず

 ◇摂食障害、「食べなさい」と強いず安らぎ与えて

 10年ほど前、フィジー諸島の少女たちが、パリのファッションを着ようとダイエットして病気になる事例が多いという論文が出ました。かつて「イエスタデイ・ワンス・モア」などのヒットをとばした米国のグループ、カーペンターズのカレンが、やせ薬などを服用して死亡したことも有名ですね。ムンクの「思春期」や藤崎孝敏の「恢復期」などの絵のモデルも、摂食障害の少女そっくりです。

 Mさん。学生の定期健診で「やせ」を指摘され、面談しました。強い風が吹くと飛ばされそうな〓身(そうしん)ですが、理知的な女性です。性格は完ぺき主義、理想主義。高校時代は陸上部で、太ると走れないと思い、ダイエットしました。ところが、もうそれ以上やせなくていい体重になったのに、今度は食べることができなくなりました。イライラがつのり、万引きしたり、フラフラして駅で倒れるような状態になり、1カ月入院。その後、通院し、自己表現するトレーニングをして現在の状態まで回復したとのことでした。

 摂食障害は、肥満へのおそれや、対人関係の悩みなどをきっかけに始まることが多いようです。自尊心が強く、自己愛的な万能感を保とうとするものの、うまくいかなくなって、自己の身体的欲求や身体イメージを抑圧しようとするために起きる--などと説明されています。人間は自己表現できない時、あるいは孤立した時、生きる欲求をも大脳で抑制できる生き物だということの表れです。

 自分の子どもに摂食障害の疑いがあったとき、心配のあまり「もっと食べなさい」というのは逆効果です。まずはその日ごとに、何かしら子どもをほめる点を探し出してください。アメリカの精神医学の父、サリバンが言うように、人間はほめられると満足感と安らぎを感じ、自分を取り戻していくようです。