漢方では、急性期である風邪の初期(太陽病期)と、風邪がやや長引いた時期である亜急性期(少陽病期)では治療内容を変更します。
発病後数日が経過すると体力は低下して行きますので、この時期には胃腸の働きを助け、体力や免疫力を高める薬を用います。
漢方では、風邪を発症時期と患者さんの体力によって6段階に分けて治療します。この考え方を「六病位」といいますが、外来には比較的元気な風邪患者さんが多いので、私は便宜上、以下の3段階に分けています。
(1)風邪の初期(太陽病期):食欲、体力がある時期。
(2)風邪をこじらせた時期(少陽病期):食欲、体力が落ちている時期。
(3)風邪が酷くなった時期(陰病期):食欲はなく、寝込んでいる時期。
(1)の時期は、発汗がなければ葛根湯、発汗があれば桂枝湯を処方します。
(2)の時期は、本稿で示した症例1のように小柴胡湯を処方します。
実際には、(1)と(2)は明快に区別できるとは限りません。(1)の桂枝湯と(2)の小柴胡湯のどちらを処方すべきか迷うことがあります。昔の医師も迷ったのでしょう。桂枝湯と小柴胡湯を足して2で割った処方である柴胡桂枝湯があります。私はこの4処方を風邪の患者さんによく処方します。