美しい雪をこの手で汚す勇気がない

雪が降ったといっては思い、
雪があがったと言っては思い、
雨になったといってはなお思い、
あなたの住むあたりはどうだろうと思い、
私はこうして思っているだけの愚かな男なのだとまた思い、
結局、思いはあなたの周辺を回転しているのだ。

あなたはこの日本に生きていて、
結婚もしていない、
わたしは会いに行っても、犯罪ではない。

しかしあなたを困らせるだけなら、
そのくらいの分別は持ちたいと思う。
わたしは縦から見ても斜めから見ても恋愛などという体質ではない。

白い雪が降り、枝を飾る。
その雪を手で触って溶かしてはいけないと思う。
うっかり手で触って、汚してはいけない。
ただ美しいままに、賞讃している。
わたしはただそれだけの男なのだ。
そして、誰か強い男があなたに現れ、
ふさわしい態度であなたを連れ去る。
それでいいのだろう。
それが人の世というものだ。

わたしには美しい雪をこの手で汚す勇気がない。