リリィ歌 「ときの過ぎゆくままに」

むかし、沢田研二が歌った。
たとえていえば、いま、疲れてけだるくて
このまま沈んでしまいたいと、
現在形で歌っている。

リリィの歌は
ねっとりからみついて
いい情緒。
たとえていえば、むかしのけだるさを歌っていて、
いま現在は恨みもあり後悔もありしかしそれでいいのだという諦めもあり、
あるいは、あんなにつらかったむかしだけれど、
いまよりはまだましだったなあなどと、
大人の感情を歌う。
そんなリリィである。

悲しい過去さえいまよりましさ
過ぎたむかしを歌うこと、いとおかし、である。

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あなたはすっかり疲れてしまい
生きてることさえ いやだと泣いた

こわれたピアノで思い出の歌 片手で弾いては
ため息ついた

ぽつんと残った指輪を見つめ
あなたはむかしを思って泣いた

からだの傷なら治せるけれど
心のいたではいやせはしない

ときの過ぎゆくままに
この身をまかせ
男と女が漂いながら
おちてゆくのも 幸せだよと
ふたり冷たいからだ 合わせる

もしも二人が愛せるならば
窓の景色もかわってゆくだろう

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個人的に、調律の狂ったピアノもなんとなく好きなのは
どうしてなんだろう

フロイトは調律がぴったり合っていた人なんだと思う

ユングはすこしずれていたのではないかと思う