あなたに逢えなくて苦しいという歌と、
あなたに逢えてうれしいという歌とを比較すると、
苦しい歌が多い。
苦しい歌は、逢ってくださいという求愛のコールだから切実だ。
一夜が過ぎて、男は、何をするか。
いい夜だったよと感謝や賛辞を言うのではなくて、
別の女に苦しいから逢ってくれと贈るのである。
だから、苦しい歌ばかりが積み重なり、
恋愛とは苦しいものだという日本和歌の世界が出来上がる。
しかしよく考えてみると、苦しいから逢って下さいとレトリックとして言っているだけで、
逢ってくれてうれしいとも思い、久々にあってうれしいとも思い、ますますうまくなったとも思い、
いろいろと書き送ることはあったはずだと思う。
習慣として、歌わなかったようだ。
しかしそんなことよりまず今夜の段取りをつけなければならないので、
苦しすぎるから逢ってくれと言い続けるのだ。
相も変わらずである。