小中高生の約1割に見られ、不登校の原因の一つになっている「起立性調節障害」(OD)について、治療方法や子どものサポートの仕方などを、一般向けに分かりやすく解説した本を日本小児心身医学会理事長の田中英高・大阪医大小児科准教授が出版した。
ODは朝起きられず、午後から回復するため「怠け病」と誤解されることが多い。同じ病気に苦しんだ長女(20)を持つ田中准教授は、親の立場からも「親、先生など身近な大人が理解してほしい」と呼びかけている。
「起立性調節障害の子どもの正しい理解と対応」(中央法規出版、税別1600円)。ODは、思春期特有の自律神経失調症で、本では、起立後に血圧が急激に低下し、回復に25秒以上要する「起立直後性低血圧」、脈拍が起立中に1分あたり35以上増える「体位性頻脈症候群」など、同学会が2006年に作った新しい診断基準による四つのタイプを紹介している。周囲は怠け者と見がちだが、「まじめで誰にも相談できず、苦しんでいる子が多い。専門医に見せれば、病気だと分かる」としている。
田中准教授の長女は、私立中2年の時に症状を訴えた。本では触れていないが、長女は先生や級友からあまり理解されなかったという。高校へは登校できず、高等学校卒業程度認定試験(旧大検)に合格し、現在は芸術系の大学に通学するまで回復した。本の表紙になった女の子のイラストも担当し、当時の苦しみについて「何とかしたかったが、体がついていかなかった。両親がそっと見守ってくれて救われた」と話している。
(記事提供:読売新聞)