うつ状態

うつ状態になる脳の原因部位はどこかという話が昔からあって議論がある

たとえば脳梗塞を起こして
そのあとうつ状態になることがあるので
どの部分で脳梗塞を起こしたらどのようなうつ状態になるのか
億劫さが強いとか死にたくなるとか憂うつが強いとか
部位と症状の関連の研究が進められるだろうと期待されたが
実際はあまり進んでいない
では考え方を変えて
うつ状態は脳の特定部位の病変による症状ではないと考えると
心身両面に及ぶ症状全体を説明しやすくなる
たとえでいえば
免疫の異常がある人は
喘息になるとか皮膚ではアトピーも起こるとか
いろいろな症状が出る
これはたとえば
胃がんになれば胃の不調があるというのとはずいぶん違う
うつ状態が脳の局所的な病変ではないとして
全体に及ぶどんな病変が考えられるのか
癌でもないし感染でもないようだし強い炎症反応もない
先天性のものでもないようだし老化とも違う
可逆性で反復性の何かである
神経がつながっている筋肉での連想でいうと
筋肉を使いすぎたあとで筋肉痛が起こり、何日かすれば自然に修復するのと似ている
筋肉に過重な負担をかけると筋肉細胞が一時的に機能停止になり
機能再開までは何日かかかる
マラソンの選手などはそんなことが起こっているのだろう
脳神経細胞の使いすぎによる疲労に起因する一時的な機能停止とその回復過程と考えると
使いすぎ→軽度の躁状態
一時的な機能停止→うつ状態
と考えることができる。
疲労による機能停止は、起こりやすい部分はあるが、
個体差により、またストレスの種類により、いろいろな場所で起こると考えれば
辻褄は合う。
脳神経細胞の主な回復過程は睡眠時に起こると考えれば
うつ状態のときに睡眠障害が多く伴っているのも理解しやすい。
脳全体とはいっても、呼吸不全になるわけではないし、心臓が止まるわけでもない。
性機能は抑制されるし食欲もなくなるけれど、生命維持装置を使わなければならないような事態は少ないので、
多分、一番古い脳での出来事ではない。
ラットでうつ病モデルはできているのでラットくらいの脳でうつ状態は見られるらしい。
は虫類でうつ状態はあるのか確認したいがよく分からない。
簡単に言うと比較的新しい脳の部分での機能停止のようだ。
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この話でいえば、
抗うつ剤に期待するのは、
脳神経細胞の回復過程に対する補助作用である。
脳神経に余計な刺激が行かないように保護すること、
栄養が充分に行き渡るようにすること、
ここが期待されると思う。
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筋肉細胞の機能停止でいえば、
筋肉細胞そのものの問題もあるが
筋肉細胞を栄養している毛細血管が壊れてしまうことも
機能停止の一因である
野球のピッチャーなどは投球により毛細血管が破れて、
休養している間に毛細血管が再建されるということらしい。
このメカニズムは脳でもやはり検討する価値はあると思う。
物理的に脳の血管が破壊されるということではないが、それに相当することが起こっていないか。
ストレスが続くと毛細血管が閉じてしまうとか。
また、脳は特に栄養不足に敏感な組織であるから
栄養成分の不足も考えられる。
また神経栄養因子などと最近言われているものもあり
それが一時的に不足して機能不全にいたり、休養によって回復するのかもしれない。
脳神経細胞の反復刺激により機能停止に至るのは
ストレスが続けばうつ状態になることとよく対応しているが
ストレス要因が特にないのに起こるうつ状態に関しては
まだよく分かっていないいろいろな神経関係の因子が関わっている可能性はある
いずれにしても一時的に機能停止して時間が経てば回復する種類の何かが起こっているはずだ。
それが何種類かあって、
そのことが、うつ病の種類の基礎になっているのかも知れない。