カバー挿画も自分で描いて、著者自装の新潮文庫である。
文章の中に「おんな」も「セックス」も登場するが、
そこで思い浮かぶのは、日本の伝統的体型の女性たちである。
最近の整形美女ではないのだ。
それがこの著者の文章が本物だという証拠なのだろう。
なかに、死に至る病という一項があり、
もてる男は幸せになれないという話である。
もてる男は、いまに最高の女が現れて自分を幸せにしてくれることをあてにしている。
だから自分がおんなを幸せにする気持ちがない。
適当に世話を焼いてもらい、時間が経つと飽きてきて、
理想と違う、どうせいまの生活は仮のものだ、などと思い、
また次のおんなを探す。
受け身の人間で、いつも人に愛されたいと思っている。
今でいえば、自己愛性格と似ている話だろう。
自己愛の備給をいつも他人に求めている。
そして備給基地に対して自分の理想を過剰に投影するので、
いつも夢は破れる。
なぜもっと愛せないのかとおんなに文句をつける。
愛ではなく、うぬぼれである。
目の前のおんなに対して申し訳がない。