進化論についてはここではいろいろに取り上げているのだが
優勝劣敗とか適者生存とかいうので
何となく
一番からだが大きいとか
運動能力があるとか
頭がいいとか
そんな人たちが生き残るような印象があるかもしれない
一番優秀とか一番美しいものが生き残り、子孫を増やす
と勘違いする
利他的遺伝子がどのくらい有利なのかについては
なかなか実感がないと思う
進化論的に何が生き残るのかのイメージの原始的なものは
猿山のボスはけんかに強くて頭がいい奴ではないか
しかしそんなことを勘違いして思うのは世の中を知らない子どもだけだ
この人間の世の中で勢力を拡大しているのは
「ずるがしこくて、いいことをするには臆病で、悪いことをするには心理的ストッパーがない」
そんなどうしようもない奴だと観察している人が多いのではないかと思う
美しくなくてもいい。美容整形する度胸があればそれでいい。
いろいろなニュースで取り上げられるのはだいたいそんな人たちだ
政治面でも、社会面でも、経済面でも、そんな人があふれているし、
そんな記事を書いている記者そのものが典型的にそんな人たちであると感じられる文章を書いている。
臆病であることは
一人で生きるにはとても不利な性質になるのだが
集団の中に紛れて臆病でいるならば
生存にはかなり有利になるだろう
みんなのために命を捨てていたのでは命が何個あっても足りない
ずるがしこいのも、一人で生きるには役に立たないが、
他人のものをかすめ取ったり、他人の目を盗んでメスを妊娠させたりするには
都合の良い性質である
正しい人間はたいていは孤立して破滅していく
悪いことを平気でする性質というものも一人で生きるには意味のないものだ
集団の中で「悪いこと」と規定されて禁止されていることを
平気でやるならば当然そこには利益が生まれる
その意味で法律の内容をよく知り運用をよく知る必要がある
弁護士や立法に関わる役人がしぱしば一番の悪人になるのはそのせいである
善悪の基準をよく知っているからぎりぎりの悪いことができる
つまり、一人で雄々しく正しく生きて、周囲を養う人間ではなくて、
集団の中に紛れて、目立たないように、ひそかに他人の利益をかすめ取り、
人がためらうような悪いことも平気でするような心の壊れ方をしている、
そんな人間が生き残りやすいのであって、
もうずいぶん長い間セレクションを受けてきた我々現代人は
どうしようもなくずるがしこく、せこく、正しいことには臆病で、悪いことには大胆なのである。
絶望あるのみである。
歴史のどこかの時点で人間の集団のそのような傾向がはっきりと見えてきて、
神様は失敗したと思って、その後、興味を失ったのではないかと思う。
これが進化という仕組みがセレクションした結果の現代の人間なのである。
クジャクの羽は無意味に美しい。
無意味なだけで害悪がないからまだいいようなものだ。
人間の場合生存に有利な性質は
集団にとっては害悪でもあると考えてしまうが
進化論はそんなことにはかまっていない
生き残るほうがいいのだ
生き残らないのは何か正しい理屈でも言って死んでいればいいのだ
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よく言われることであるが
戦争になってしまったとして、
勇気があり、たくましく、正義を信じる人間は、最初に残らず死んでしまう。
それが戦争の一番悪いところだ。
生き残るのは、勇敢な人に戦争に行けと命じておいて、
自分は防空壕の中で息を潜めて、食料と女に囲まれている人間。
それがずるくて、臆病な人間である。
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正しくて勇敢な正義の人間を殺してきた進化の仕組みを
わたしは肯定できない。
できることなら
この悪しき進化の仕組みを変えたいと思う。