ソニー・トリニトロンの修理

真夏の一日、テレビが映らなくなった

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若い人のために言うと、
トリニトロンというのはソニーという日本の古い電気の会社が作った
ブラウン管に属する、当時最高の画質と音質を誇ったテレビ
それがある限り世界のテレビのトップシェアでいられると過信していたソニーは
液晶はスポーツ画面に向かないなどと宣伝して
うっかりしていて液晶時代に乗り遅れてしまい
シャープに先行され
後手後手に回りつつ
いよいよソニーもトリニトロン製品打ち切りの日が来て
わたしは郷愁にかられてその最後の製品を記念に購入
いまだに使っている
ソニーは同じパターンでiPodに負けてしまうなど、その後も
同じ敗戦パターンが続く運命にあった
自分のノウハウはなかなかすごいと思っている老人が
若い人の新しい技術にあっという間に追い抜かれてしまう
うっかりしていてその現実を受け容れるのに時間がかかる
これは高齢者によくあるパターンで
ソニーも一種の高齢者の特性を呈している
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どうしたのかなと思ってよく見ると
電源部分のランプがタイマー/スタンバイの赤の点滅になっている
調べてみると電源部分の故障でサービスを呼んでくださいと書いてある
9回点滅して少し休んでまた9回
と電話で言うと修理に行きますという
時間を合わせて修理の人に来ていただいた
真夏なのにね、大変
男性の二人組
点滅を見て、それだけで診断は終了
ねじをはずして、部品を交換、半田付けなどもして、てきぱきと進む
シェフが目の前で焼いてくれる鉄板焼きみたいな感じ
すごい量の電子部品の構成物
なかはとってもきれいですねとほめてくれた
ねじを回すのも自動のドライバーでしめるときも自動で止まるようになっている
その技術にも感心するが
そういえば人間は手でねじの締め具合を確認してどのくらいで完了と感じるか決めていて
その曖昧な部分の判断が、別段詳しく言わなくてもできるという点が人間の脳の賢いところだ
コードをはずすときはきちんとマーキングして、
元に戻すときに間違いのないようにする
基本通りだ
道具を出すときはきちんと出して、
使ったら、整理して収納する
道具はアタッシュケースにコンパクトに収納されている
最後に電源部分のチェッカーのようなものがあって、
声が出て、正常に使用できますと教えてくれる
元通りに戻して終了
ノートパソコンで小型プリンターを利用して明細を印刷
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往診はかくありたいものだと感心
再びきれいに映ったテレビを
三人で見て
修理の人はほれぼれとして
きれいですねーと言うので少しうれしい
画面にはニュース速報で
東京23区で大雨警報と出ていた
最近は大雨というと本当に大雨だから驚きますね
なんて言いつつ終了
画面では農家の老齢者男性が出ていて
稲藁から両手を自在に動かして縄を綯う様子
これもすごいねえ、なんて言う
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修理の場所を確保するために少し部屋片付けた
いつも動かさない椅子を動かしたら
冬の間ずっと探していた冬用の外着が出てきた
ずっとこの椅子に載っていて隠れていたのだった
ついでなので片付けなどをする
あっという間にずいぶん片付いた
読んでいないがこれから読む予定の新聞、雑誌などたくさん
古いものが下になる
時間があって読むとしても新しい方から見ることになる
本棚には読むつもりで読んでいない本がたくさん
背表紙が変色しつつある