こころの病

こころの病と簡単に分かったように言うが

それはなんだろう
病というものは
医学で言えば
生体の機能不全があり、かつ、その背景となる構造的裏付けがあるものを言うと
わたしなら定義する。
どの範囲を機能不全と言うかについては
社会の習慣が決める部分がある
山岳に生きていれば海水を泳ぐ機能は問題にされることがない
構造の変化を確定するためには
光学顕微鏡や電子顕微鏡などが主に使われる
レントゲン、CT、MRIなどはもっとマクロな変化を見るためのものである。
それを構造の変化とは言わない。
心電図や脳波は機能の変化であってそれ自体は構造変化の裏付けではない
それを裏付ける機能の変化を見つける必要がある
機能の変化には、必ず構造の変化がある
これが医学で言う、生理学と解剖学の関係である
解剖学の本の一ページ目に書いてあったのでよく覚えている
病的機能には病的構造がある
ーー
心の病と確定するためには
心の機能に変化が生じていて
それを裏付ける構造の変化が生じていることが条件となる
主観的な不調も
周囲の目から見た不調も
どれも心の病と呼ぶには不十分である
脳の構造にどのような変化が生じているかについて
アルツハイマー病やピック病、ALSやパーキンソン病ではさまざまに研究が進んでいる
しかし
統合失調症や躁うつ病、またうつ病、パニック障害でどのような構造変化が生じているのか
明らかではない
機能に異変があることは確からしいので
構造に異変があるはずであるが
どのレベルの問題であるのか
よく分からない
現在よりもさらにミクロな細胞内構造のレベルの問題であるのか
あるいはもっとマクロな神経回路の問題なのか
そこが確定できない
セロトニントランスポーターの問題が言われているうちに
セロトニンにプラスして一系統、合計二系統の薬剤が抗うつ剤として平気で使われている
ドパミン仮説は当然、統合失調症とパーキンソン病の特殊な関係を推定させるのであるが
今のところ、密接な関係は言われていない
そして統合失調症は心の病の範疇であり
パーキンソン病は体の病の範疇である
運動機能に関係したドパミン系と
精神機能に関係したドパミン系の異変の違いということなのか
そしてさらに一方はドパミン減少で一方はドパミン過剰が特徴ということになり
治療としてはドパミン補充とドパミン遮断ということになる
もちろんパーキンソン病の場合の特有のアパシーは指摘されていて、
うつ病とは違う病像の意欲減退を呈すると言われている
そのあたりもどのような事情なのか判然としないままである