進化とストレス

北極熊の飼育の話がテレビで流れている

北極は基本的に雑菌が少ないので
用意した代理乳に少しでも雑菌が入っているとダメらしい
飼育の人の話では
動物の病気の一番の原因はストレスだという
ーー
それならば心身症の話になる
こうした話の場合のストレスは
いろいろな解釈があると思うが
進化論的にいえば
ストレスは適応状態の指標ということになる
進化論では
動物は常に環境への適応をテストされていて
その結果に応じて次の世代の遺伝子分布が決定される
その場合に
適応を常に100%に保つのではなく
急激な環境変化があっても何とか全滅しないで適応できる範囲で、
しかも、なるべくよい適応を、という背反する要求に応えるようにできている
もしものことを考えずに
最大適応を目指して、結果として絶滅した生物はたくさんいたわけで、
そのような遺伝子は排除されていくのが合理的である
ーー
そんなわけで
ストレスはよいもの悪いものという以前に
生きることが遺伝子の適応テストである以上、
否応なしに適応不適応の程度は発生するもので、
だからストレスはあるに決まっているし
ストレスがなくなればそれは進化の圧力がなくなったのと同じことになる
全く静的な世界でならば
完全な適応状態を維持することを目標としていいのだろうけれど
この現実は動的な世界であり
動的な世界に動的に対応するためには
常にストレス状態を維持しながら
次世代の遺伝子をセレクションしなければならないようにできている
ーー
そのように考えてみると
配偶行動におけるパートナー選択がストレスの重要な要因であることが分かる
進化の淘汰圧・セレクションプレッシャーがストレスとして表現されているとすれば
そのもう一つの現れはパートナー選択であり
パートナー選択というのは恋愛のことだ
恋愛しない、されない社会を考えてみれば、
ストレスの大部分はなくなってしまうかもしれない
他者に優越する動機がなくなってしまうだろうから
進化もないがストレスもない社会になるだろう
ーー
進化とストレスの因果関係は原因と結果というようなものではなくて
同時発生のような感じ
ストレスがあるから進化するというのも正しくないし
進化のためにストレスが仕組みとして用意されているというのも正しくない