抗うつ剤は神経症を軽減
2009-12-07 17:58:46 -0400 (ロイターヘルス)発
By Julie Steenhuysen
シカゴ(ロイター) – 抗うつ剤は、抑うつ状態の症状を緩和するのにとどまら
ず、神経症を軽減する可能性があると、月曜日に米国の研究者が述べた。
一般名パロキセチンとして知られている、GlaxoSmithKline社製のパキシルを
服用した患者を対象とした研究は、本剤によって、もともと人を落ち込みやす
くさせる神経症的傾向などの因子を治療できる可能性があることを示唆してい
る。
「我々のデータによると、最新の抗うつ剤は、抑うつ状態の主な人格的リスク
要因を一部修正する作用がある」とArchives of General Psychiatry誌12月号
に研究を発表したNorthwestern University(イリノイ州エバンストン)の心理
学教授のTony Tangは述べた。
神経症患者は、しばしば一日のうちに気分の激しい変化が認められ、否定的な
感情を覚え、感情的に不安定になる傾向がある。
「否定的な感情を持つ基本的な傾向が問題だ」とTang教授は電話によるインタ
ビューで述べた。
同教授によると、多くの研究から神経症傾向の強い人はうつ病になるリスクが
高いことを示唆している。
また外交的な人、つまり社交性がありかつ人生において前向きな見通しがある
人は、うつ病になりにくいという示唆もいくつか存在する、とTang教授は述べ
た。
両方の性格特性は、脳内化学物質のセロトニンレベルに影響されている。セロ
トニンは選択的セロトニン再取り込み阻害薬すなわちSSRIとして知られてい
る、主要クラスの抗うつ剤の最重要標的である。
Tang教授らは、商品名セロザットとしても販売されているSSRIパキシルに抑う
つ状態の症状治療以上の効果があるかどうかを検証した。
抑うつ状態の被験者120名に本剤を投与して、その経過について、認知行動療
法を受けた60名とプラセボを服用した別の群60名と比較した。
人格と抑うつ状態の症状を治療前および治療後に評価した。
「非常に劇的な変化」
12週間後、全被験者に抑うつ状態の症状改善が見られたが、パキシル投与群の
被験者は他の群の被験者と比較して、神経症的傾向の有意な低下と外向性の著
しい増加も見られた。
「パロキセチン服用患者は、抑うつ状態の改善のために整合されたプラセボ服
用患者と比較して、神経症的傾向では6.8倍、外向性では3.5倍の変化が認めら
れた」と著者らは記している。
「非常に劇的かつ注目すべき変化である」とTangは述べた。
「治療開始時は、全員に異常が認められた。神経症的傾向は異常に高かった。
治療終了時には、正常範囲の境界内に戻った」
同氏によると、SSRIクラスの薬剤の多くは概して同じように作用し、同じ効果
があると考えられる。
David Geffen School of Medicine at University of California(ロサンゼル
ス)のDr. Ian Cookは、研究チームの一員ではないが、本知見は医者に抗うつ
剤の作用に関する仮説を考え直させることになるかもしれないと、述べた。
「長年、治療中に見られる人格の変化は抑うつ状態が管理されたことの現れで
あると考える傾向が社会通念であった」と同氏は述べた。
他の研究で確認されれば、本知見は、どういう人が深刻な抑うつ状態になるリ
スクが高く、またどの患者に治療効果があるかをより正確に予測するのに役立
つ可能性がある、とCook氏は述べた。
Arch Gen Psychiatry 2009:66;1322-1330.