抗てんかん薬は双極性障害患者の自殺リスクを高めない

抗てんかん薬は双極性障害患者の自殺リスクを高めない
2009-12-07 16:00:15 -0400 (ロイターヘルス)発
By Megan Brooks
ニューヨーク(ロイターヘルス) – 双極性障害患者において、抗てんかん薬
(AED)は自殺企図のリスクを増加させないようである。それどころか、このよ
うな患者の自殺傾向を防ぐ効果を持つ可能性があることを、本日December 
Archives of General Psychiatry誌に掲載された研究が示している。
筆頭著者であるUniversity of Illinois(シカゴ)のDr. Robert D. Gibbonsと
共同研究者であるDr. J. John Mann、Dr. Hendricks BrownおよびDr. Kwan 
Hurは、連名によるロイターヘルスへのメールの中で、双極性障害患者が抗て
んかん薬による治療を開始しても「全体的な自殺リスクが増加する見込みは低
いことを、我々の結果は示唆している」と述べた。
2008年1月31日、米国FDAは、AEDは自殺念慮および自殺行為のリスクを高める
可能性がある、と医師に警告した。6ヶ月後の7月10日、FDAの科学諮問委員会
は、AEDと自殺傾向には有意な関連性が存在するという結論に至ったが、黒枠
警告には反対票を投じた。
双極性障害患者は一般集団よりも自殺のリスクが高く、患者はAEDによって治
療されることが多い。双極性障害患者47,918名のコホートにおいて、Dr. 
Gibbonsらは、AEDまたはリチウムによる治療を開始する前と開始した後の患者
についてだけでなく、AED11剤のうち、いずれかのAEDによる治療あるいはリチ
ウムによる単剤療法を受けた患者、または受けなかった患者の間で、自殺企図
率を比較した。
合計で患者13,385名がAEDを投与されており、25,432名はAEDもリチウムも投与
されていなかった。後者のうち、11,207名はその他のいずれの中枢神経系作用
薬も投与されていなかった。
治療後の自殺企図率は、ADE(1,000名・年あたり13回)およびリチウム(1,000名
・年あたり18回)ともに、無治療群(1,000名・年あたり13回)と同等であった、
と研究者らは報告している。
さらにAED治療患者の場合、自殺企図率は治療後よりも治療前で有意に高かっ
た(1,000名・年あたり企図回数72回対13回)、と研究者らは報告している。
また、抗うつ薬、他のAED、または抗精神病薬による併用治療を受けていなか
った患者の場合、AEDは薬剤治療なしの場合に比較して、有意な防止効果を示
した(1,000名・年あたり企図回数3対15)、と同研究者らは述べている。
「我々の研究では、抗てんかん薬と自殺企図の関連を見出すことはできなかっ
たが、むしろ、抗てんかん薬は、適応症が何であれ、抗てんかん薬が処方され
る自殺リスクが最も高い双極性障害を患う患者において、防止作用の可能性が
あると示唆されている」と研究者らはロイターヘルスに述べている。
これに対して考えられる例外は、治療によって自殺企図に有意な減少が示され
ず、未治療レベルよりも有意に高い治療後の自殺率が明らかになったAED、ト
ピラメートとカルバマゼピンである、と同研究者らは指摘している。「とはい
うものの、これらAED2剤ですら、それらが自殺率を高めたという証拠はない」
と同医師らは述べた。
Dr. Gibbons、Dr. Mann、Dr. Brown、およびDr. Hurは、「中枢神経に作用す
る全ての薬剤と同様に、患者は自殺念慮や自殺行為など精神科領域の副作用に
ついて注意深く監視されなければならない」とロイターヘルスに宛てたメッセ
ージに記した。
Arch Gen Psychiatry 2009;66:1354-1360.