猫をよく連れてきていたおばあちゃん

動物病院に、猫をよく連れてきていた
70代のおばあちゃんがいて、その人は小柄でしっかりとした
たぶん教育のある様子で、
難しい漢字もすらすらっと書くし、ポンポンと面白い事も言える人でした。
以前は資産家だったのかなというような人で、

支払いに困る様子はありませんでした。

猫を連れてくる理由としては、おばあちゃんは猫が嫌いなのに、
息子さんが無計画に次々猫を拾ってきて、ほっといたら交尾して増えてしまうので、
避妊、去勢をしてくれという事で連れて来るのでした。
息子はどうもニートらしく、顔を見せる事もありませんでした。

あの馬鹿息子は「私のことを蹴るんだよ」とよく話していました。
特に暗い様子もないし、一時は息子さんなどいなくて、
少し認知症で、作り話をしてるかなと思ったくらいです。

病院に来るといろいろ話をして、私もお相手をしていました。
「息子はビールは飲まないけど、私はビールを飲むんだ。
このおいしさが息子には分からない、ざまあ見ろ」なんていって、
「ビールの空の缶を昼間一本テーブルの上において置くと、
あの馬鹿息子が‘婆、ビール一本飲んだなと’と思うでしょ、
実は朝もう一本飲んでるんだ」・・・などとそんな話もして、
面白いおばあちゃんでした。

そのおばあちゃんが、しばらく顔を見せないなと思っていたら、
家で布団で亡くなっているのを発見されたと、人から聞く事になり、
それは衝撃でした。
横の布団には、息子が自殺していたそうです。
おばあちゃんは、多分息子の暴力による外傷性ショックで亡くなったとの事でした。

息子の話をおばあちゃんがしていたのに、何も出来ませんでした。
周りがもっと救いの手を差し伸べるべきだったのか、どうしようもなかったのか。
息子さんを治療するなど、方法があったのでしょうか。

おばあちゃんは、結局息子一人をこの世には置いていけず、
一緒に連れて行ったのかな、などとも考えます。
息子を許しているような気がするのですよ。
あの馬鹿息子と言っていた時も、愛情があるのを感じました。
親子についていろいろ考えさせられました。

投薬による治療という方法は、あったのでしょうか。

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投薬治療が有効だった可能性はあります
また通院リハビリの形で仕事ではないまでもみんなで集まって共同作業をするデイケアとか
通所作業所とかそんなものもありますので
医者に行けばいいけれど行かない場合は
保健所の保健婦さんに訪問してもらうという手があります
患者さんの会や、患者家族の会などもありますので、手がかりになったかもしれません。
母親はどうしても子どものことは自分の責任と思う面があるようで
いいことではあるのですが
背負い過ぎもよくありません
もっと専門家を頼ってもいいと思います