老いた妻と夫・それぞれの言い分・配偶者選択を間違えた男の末路

わたしはね、あの人を許しませんよ、
あの人は、若い愛人に走ったんだから、
そのときの私のことを考えてください、
自分が体が悪くなったというんなら、
その人に面倒見てもらったらいいじゃないですか、
二人とも、よくってくっついたんでしょうから、
それを、
いまさら、
なんですか、
わたしが面倒見るんですか?
いいときだけはあっちで、
大変になったら、こっちと?
まさかねえ。

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と奥様はご立腹である。

しかしまた夫は言うのだ。

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わたしが浮気したから
私の面倒を見たくない?
あの人の言いそうなことです。
歳をとってから親切に面倒を見てもらえると確信できたら、
わたしだって浮気なんかしませんよ、
本気で、自分の人生のすべてを託せるパートナーが欲しかったんです、
浮気なんかじゃありません、
残念ながら、
そうはできませんでしたが。
でも、悔いはないんです。
わたしはトライしたんですから。
運がなかっただけです。
あの人はわたしが浮気をしてもしなくても、
私の面倒を見てくれる人じゃないんですよ。
それが分かったからこそわたしだって
放浪したわけで。
いつまでも人のせいにしていればいいですよ。
もう慣れてますし、
驚きませんがね。
歳をとると、自分のしもが緩くなるのも分かるんです、
臭いもきついなって思います。
そんなのをあの人がきらうことは分かっているんです。
虐待ですよ、一種の。
でも、あの人は冷たいマゾヒストで、
こころは鉄のようです。
配偶者選択を間違えた男の末路とでも書いてください。