婚活で疲れてしまう原因のひとつ
経済面についてわかり易い説明
社会的・心理的面ではまた別の事情があるようである
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山田 昌弘、開内 文乃
豊かになったアジア人男性と、停滞した日本に見切りをつけ世界に飛び出す日本人女性が出会って結婚
従来の国際結婚と言えば、日本人男性とアジア人女性、欧米人男性と日本人女性という組み合わせが一般的
現在、アジア人男性と日本人女性というパターンが目立ち始めている
国際社会の中で地盤沈下する日本と発展著しいアジア諸国の経済状況が反映している
結婚したいけれども、結婚できずにいる男女が溢れているのが、日本の現状である
女性から見て、結婚してもよいと思えるような男性の絶対数が不足している
男性は、自分の収入で一家を支えるのが原則だから、結婚相手の職業や収入などにこだわる必要はない。しかし、女性は、相手の経済力にこだわらざるをえない。その際、女性は、自分の現在の収入や、そして、自分の父親の経済力などと比べて、相手の男性の経済力が「上」、せめて、「同等」でなければ、結婚に踏み切りにくい。そうでなければ、女性は結婚によって、生活水準が下がってしまう。これが、「女性上昇婚」の基本的メカニズムである。
女性にとって、将来的に経済力が親よりも高くなる見込みの未婚男性は容易に見つかった。女性の親が相対的に豊かでなかったことも、若い男性に優位に働いた。
オイルショックによって経済の高度成長が終了し、時代は低成長時代に入る。すると、若年男性の収入はなかなか上がらない一方、彼らの親世代の収入は高いままである。さらにバブル崩壊(1993年)からアジア金融危機(1997年)、そして、リーマンショック(2008年)と続く中で、若年男性の経済力は、平均的にみて低下すると共に、男性の非正規雇用が増えるし、自営業の保護も弱まる。結果的に若い男性の収入格差が拡大し、職が不安定になっていくことでもある。
一方、1985年成立の男女雇用機会均等法に象徴されるように、女性も仕事でキャリアウーマンとして活躍するチャンスが広がる。もちろん、すべての女性がキャリアウーマンとなれるわけではない。一方で未婚女性の非正規雇用者も増えている。つまり、女性同士の格差も広がっているとも言える。とにかく、男性と同等以上の学歴を持ち、同等以上の職に就き、同等以上の収入を得ている女性が増え続けていることには違いない。
その結果、女性上昇婚の限界が明らかになる。男性の雇用状況が厳しくなり、女性の職場進出が強まると、女性の上昇婚を可能にするほどの経済力を持つ男性の数が足りなくなる。これが結婚をめぐる男女のミスマッチ拡大の原因なのだ。
一つは、親と同居するパラサイトシングルが増えて、女性が結婚生活に求める生活水準が高くなっていることがある。今の多くの未婚女性は、たとえ本人の収入が少なくても、親と同居して比較的豊かな生活を送っている。そこで、専業主婦を目指す女性の場合、新婚生活を始める時に夫の収入が相当高くなければ今以上の豊かな生活が送れない。それを支えることができる若年男性は減っている。なかなか結婚相手が見つからないから、親元に残り、収入の高い男性と出会うまで待っている女性たちである。これを仮に、「セレブ主婦をめざす女性たち」と名付けておこう。
もう一つは、本人の学歴や職業レベルが高い女性たちである。彼女たちは、自分と同等以上の学歴や収入を持った男性を選ぼうとする。本人の収入が高ければ結婚相手の収入は低くてもいいと考えがちだが、現実は逆である。結婚して「上昇」するという意識の刷り込みは深いということもあるし、自分が仕事を辞めても生活できる男性を求めるという計算もあるだろう。また、周りに対するプライドという要素もあるだろう。いろいろな意味で、収入や職業レベルの高い男性を求めるが、その絶対数が不足しているので、結婚せずにいる女性たちが増えている。これを仮に、「キャリア共働きをめざす女性たち」と名付けておこう。
どちらにしても、より、高収入、高学歴の男性を結婚相手として求めることには変わりはない。ただ、理論的に2つのタイプに分けたが、セレブ主婦、キャリア共働きを目指す女性は、実は、かなり重なり合っている。比較的裕福な親の元に生まれ、高等教育を受けた女性が、キャリアを目指すも、挫折して、セレブ主婦にあこがれるというパターンは多いし、結婚退職するつもりが、仕事の面で能力を発揮して辞められなくなるという女性もいる。結婚をきっかけに夫の仕事を手伝っているうちにいつのまにか、キャリア共働きになっているというケースもある。
結婚していない男性は、収入が低く仕事が不安定な男性が多い。結婚していない女性は、安定した収入の男性と結婚して養って貰いたい専業主婦志向の女性(セレブ主婦志向の女性)か、自分以上の学歴、収入をもつ男性と結婚したいキャリアウーマン(キャリア共働き志向の女性)に多い。この両者は出会っても、女性上昇婚にはならないから結婚に結びつかないだろう。そして、この両極の男女が、増大していることが、国際結婚増大の背景にあるのだ。
国内的には限界に達している女性上昇婚のシステムを維持しようとする、一つの試みが国際結婚と言える。
収入が低く不安定な日本人男性は、国内の女性にとっては上昇婚の対象にはならない。しかし、世界的に見れば、まだ日本人男性の収入レベルは低いとはいえない。発展途上国には、日本では収入が低い男性を、上昇婚の対象として見てくれる女性はまだまだ多いのだ。
一方、セレブ主婦志向の女性たち、そして、キャリア共働き志向の女性たちともに、彼女たちのお眼鏡にかなう独身男性は日本国内では少なくなっている。しかし、世界を見れば、まだまだいるのである。それが、欧米からアジアに広がっているのが今の状況である。