採録
パナソニックの社長を、どっかの企業が引き抜きに来るかといえば、来ない。こんなの経営者と言わない。いや、パナソニックだけじゃないですよ、トヨタの豊田章夫さんを、どっかが引き抜きに来るかといえば、来ない。もっといえば日本の経営者の多くは新入社員で入って、30数年間社員として働いて、運がいいと経営者になる。問題は、よく言うんですが、日本の場合、経営者になる条件って私は4つあると思う。
一つは30数年間失敗しないこと。企業を取材していたとき、この男はおもしろい、っていうのはいたんですよ。でも彼らは、その後、だいたい常務止まりなんです。なんで常務止まりかというと、こういう男はチャレンジするんですね。チャレンジすると失敗もある。その段階で、日本ではアウトですよ。
2つ目。経営者になるにはね、人づきあいがいいこと。人当たりがいい。だから、悪口を言われないことなんですよ。だいたいね、業績を上げるとか、会社に変革をもたらす人は個性的な人が多い。だいたい個性的なのは、褒める人もいれば、貶す人もいる。貶す人がいたらだめなんですよ、日本では消去法ですからね。貶す人がいない人が社長になる。
3つめは運がいい、そして4つめには力がある。こういう人が社長になる。だから彼らが考えるのは、まず失敗したくないということです。
経営者も調整役だから自分で決定をしない。会議ばっかり何度もやる。
同じ釜の飯30年の人間だけで役員やってると、全員が食中毒にかかっちゃうことだってあるんですよ。
日本の一部上場企業の経営者には、夕食を自宅で取る人はほとんどいない。ビジネスですらない、"つきあい"で忙しいからです。土日は必ずゴルフ行く、これもまた"つきあい"なんですね。ずっと気持ちのいい人、仲間とばかりつきあってるから、それが自分の世界になってしまうんです。会社の外の友だちも全部同年代なんです。これがまた決定的に問題です。今まで日本的経営とか積み上げで内部調整、そういうのでなんとかやってこれたんだけど、今はできない。
ITで今、一番危険なのは食わず嫌いなんです。「なんか流行ってるらしい。だけれど、オレは使ったことがない。だからあれはダメだ」というのがダメなんです。
自分よりできる男を雇い、それを後釜に据えることが本当の経営者のやることだと思うんですよ。
思いきって勝負かけなきゃいけないんです。ちょろちょろっと勝負かけちゃだめなんです。
「ニッポン」って言葉を社名につけてる会社は世界企業になれないって言ってるんですよ。「ニッポン」だもの。NTTは「Nippon telephone Teregraph」でしょう。Teregraph=電信なんてついてちゃだめですよ。いつの時代なんですか。社名は"名は体を表す"ですけど、やっぱりブランディングってすごく重要だと思うんですね。
そういうところもやっぱり経営の意識です。、新しい技術に対する開発もそうです。去年の延長線上に今年、今年の延長線上に来年という高度成長期のやり方は、20年前に終わっちゃってんですよ。去年と同じことやっててもだめなんです。