うつ病:なぜここまで追い詰められたのか 自殺遺族の手記など、尼崎で特別展

うつ病:なぜここまで追い詰められたのか 自殺遺族の手記など、尼崎で特別展 /兵庫 
◇「私の中で今、生きているあなた」 
◇うつ病「誰にでも」

 過労や職場の心労などからうつ病になり、自殺した人の写真や遺族の手記などを展示した「私の中で今、生きているあなた」が10日、尼崎市総合文化センターで始まった。「夫は何も悪くない。夫の人生を公表し、社会の関心を集めることで、次の犠牲者を出すことを防げたら」と。

 大手運輸会社に勤めていてC型肝炎ウイルスに感染。慌しい仕事の中、十分な治療もできず、上司からは退職を勧められるなどして、うつ病を発症したという。不慣れな職場への配置転換もあった。「37年間以上、夫は会社のために身を削って尽くしていた。その会社が、うつと肝炎を抱えた夫にもっと配慮してくれていたら、夫は今も私のそばにいたはず」と訴える。

 うつ病による自殺は、その人が弱いからではなく、理解が足りない環境が生んだ社会問題だと指摘する。「誰もがうつ病になり、自殺する可能性がある。展示会を見て、『自分とは関係ない』ではなく、普通に仕事をしている誰にでも起こりうる問題だと感じてほしい」と話す。

 会場には、自殺者50人のリストのほか、「私は弱い人間でした。何とかがんばろうと努力して行きましたがもう限界です」(44歳、会社員)、「毎日の生活に心も体もつかれ、精神的にまいってしまいました。休息したい」(29歳、医師)などという最期のメッセージも展示。「彼らがなぜここまで追い詰められたのか、一緒に考えて」と話している。