『眠られぬ夜のために』第二部
「7月4日
この世の最善の宝はなんであるか、それをあなたは知りたいとおもうだろうか。
それは、たとえば、神の近くにあること、
精神と身体の健康、よき結婚生活、よき国民性と教会、十分な収入のあるりっぱな職業、
よき友人、すぐれた教養、生涯の主要部分をよき時代にめぐまれること、
さらにできれば聖霊の賜物のひとつにでもめぐまれること(…中略)などである。
人生の幸福にぜひとも必要なのは、これらのうち、
まず第一のもの(神の近くにあること)だけである。(…以下略)」
(筑摩叢書:前田敬作訳)
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近くにあること
という表現は
どの状態が神に近いか遠いか全く未確定でなんとでも言えるのでおもしろい
それ以下の
健康、よき、りっぱな、すぐれた、など、いずれも未確定なものばかりで
何とでも言える
逆に厳密な精神にとっては自分をなかなか肯定できないので非常に苦しいはずである
非常にどころか
無限に苦しいのであって
自分もまあまあだななどと
とんでもない悪人も考えているし
加害者が俺だって被害者なんだと居直ったり
それが人間の現実である
生きているということはそれだけたくさんの妥協をしているはずで
偉そうなことは言わない方がいい