定期的に起こる慢性頭痛のうち、日常生活への影響が特に大きいのが「片頭痛」だ。嘔吐(おうと)を伴う強い痛みが週2回程度、数日間続く場合もあり、寝込んでしまう人が多い。北里大研究班の全国調査(97年)によると、15歳以上の1割近くが片頭痛を持ち、女性の患者が多いという。
相模原市の団体職員の女性(52)は中学生のころから片頭痛になった。頭痛の発作は月1~2回で、市販の頭痛薬などでしのいでいたが、約3年前から仕事が忙しくなり症状が悪化。毎週3日間程度痛みが続くようになり、薬も効かなくなった。「頭が脈を打つようにガンガンして10センチも動かせない。寝ているしかないが、痛みで眠れない」。近くの大学病院を受診し、片頭痛専用の治療薬や予防薬を処方された。現在は発作が週1回程度に減り、処方薬を飲めば痛みが引くという。
片頭痛は、過労や睡眠不足によるストレス、月経期の女性ホルモンの減少などが原因で脳の血管が拡張し、周囲の神経を刺激するために起こると考えられている。まぶしい光や騒音によって痛みが増す。患者の2~3割には発作の数分~1時間前に、視野の片側または中心部がチカチカ光って見えにくくなったり、手足のしびれ、言語障害などの前兆があるとされる。
片頭痛は遺伝するケースがあり、特に母親が患者の場合、娘も片頭痛になる確率が高いという。鈴木則宏・慶応大教授(神経内科)は「片頭痛は立派な病気だが、普段は症状が全くないため、医療機関を受診せずに我慢してしまう人が少なくない。自分が片頭痛だと疑われる場合は、家族らへの影響が大きいことも自覚し、早めに医師に相談して服薬などの指導を受けてほしい」と訴える。