戦後日本の高度成長は「奇蹟」ともいわれるほどめざましいものだったが、いま起こっているのは、その逆に世界でも例をみない逆高度成長である。高度成長の要因を産業政策や「日本型企業システム」などに求める議論もあったが、実証研究の結果はもっと平凡なものだ。それは人口の急増によって低賃金の若年労働者が増え、彼らが農村から都市に大量に移動したという要因でほとんど説明できる。
そして今、この高度成長を支えた人口動態が逆回転し始めている。高齢者が急増し、若年労働者が減るのだ。その結果として本書が予想するのは、意外な現象だ。すなわち、都市の急速な高齢化が起こるのである。東京圏では2035年までに65歳以上の人口は75.7%も増え、人口の32.2%を占めるという。これは現在の島根県より高齢化率が高い。