補中益気湯

 ドリンク剤のCMを見ていると、疲れ果てたときなどにとても元気が出そうな気がしてきます。気が滅入ったときにも効きそうです。

 漢方薬でも、生薬の人参黄耆(おうぎ)を含んでいるものはそのような効果が期待できます。代表は補中益気湯(ほっちゅうえっきとう)で、僕もバテたときには毎食前に飲んでいます。飲むと気力が出るのです。1日飲んで元気になればそれでよし。ただ、数日飲んでも、1カ月続けて飲んでも大丈夫です。

 癌など大きな病気で入院すれば、当然気が滅入ります。このような疾患で入院した患者さんで、漢方を希望する人には補中益気湯を処方しています。動物実験で、補中益気湯には対癌免疫を亢進するなどの効果が認められたあると報告されていますが、それは二の次の話。ともかく気力が増して闘病意欲がわくことが大切ではないでしょうか。

 人参と黄耆を含む漢方薬は、補中益気湯のほかに、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)、大防風湯(たいぼうふうとう)、帰脾湯(きひとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)、清暑益気湯(せいしょえっきとう)、当帰湯(とうきとう)、清心蓮子飲(せいしんれんしいん)など。どれも患者さんに処方する際は「ドリンク剤のようなイメージで、元気がでる薬だよ」と説明しています。いずれにしても、「虚証」と呼ばれる消化機能が弱い人用の薬です(「虚証」についてはまた改めて説明しますが、入門段階ではこのように理解すると分かりやすいと思います)。

 もちろん、同じように人参と黄耆を含んでいるといっても、少しずつその効果は異なります。どのような患者さんに処方すべきかは、表を参考にしてください。表の中でも十全大補湯、大防風湯、加味帰脾湯、半夏白朮天麻湯、清心蓮子飲はよく使われる薬です。ぜひ覚えておいてください。

 

表 人参と黄耆を含み、「元気が出る」漢方薬の一例
漢方薬名 効果のある症状
補中益気湯 ほちゅうえっきとう 疲れ全般
十全大補湯 じゅうぜんたいほとう 貧血様症状や皮膚のカサカサがあるとき
人参養栄湯 にんじんようえいとう 冷え性
大防風湯 たいぼうふうとう リウマチ患者
帰脾湯 きひとう 不眠
加味帰脾湯 かみきひとう 不眠
半夏白朮天麻湯 はんげびゃくじゅつてんまとう めまい
清暑益気湯 せいしょえっきとう 泌尿器疾患
当帰湯 とうきとう 腹部膨満感や腹痛
清心蓮子飲 せいしんれんしいん 残尿感、頻尿