モラル・ハラスメントと自己愛性性格

マリー=フランス・イルゴイエンヌ氏は、著書『モラル・ハラスメント』のなかで、加害者を「自己愛的な変質者」「症状のない精神病者」であると語っています。

つまり、加害者は、自分がモラル・ハラスメントを行っているなどとは夢にも思っておらず、考え方を修正しようという気持ちもありません。被害者がなんとかして加害者の心を変えようと思っても、精神的負担を増やすだけで、状況は何も変わらないということが多いのではないでしょうか?

加害者のなかには、やさしい態度やへりくだった態度であなたに近づこうとする人もいます。しかし、それがあなたを利用するための行為ではないかを注意深く見極める必要があります。自己愛が強く、自己中心的な人には以下のような特徴があるので、心当たりがないかチェックしてみましょう。

・いつも自分が優位に立ち、賞賛が得られないと気がすまない
・他人の気持ちに共感することや、心を通わせあおうという気持ちがない
・他人にあこがれて近づいても、すぐに嫉妬で心がいっぱいになる
・他人をほめることをしない。欠点をあげつらい、いつも悪口をいっている
・自分の考え方や意見に異を唱えられることをいやがり、無条件に従うことを要求する
・自分の利益のためなら、他人を平気で利用しようとする
・自分は特別な人間だと思っている

また、先ほど紹介した『モラル・ハラスメント』の本には、加害者が相手を不安に陥れるためによく使う方法について記されています。

・政治的な意見や趣味など、相手の考えを嘲弄し、確信を揺るがせる
・相手に言葉をかけない
・人前で笑い者にする
・他人の前で悪口を言う
・釈明する機会を奪う
・相手の欠陥をからかう
・不愉快なほのめかしをしておいて、それがどういうことか説明しない
・相手の判断力や決定に疑いをさしはさむ
  
  --『モラル・ハラスメント』(マリー=フランス・イルゴイエンヌ著・高野優訳/紀伊国屋書店)より

もちろん、多少上記のような特徴を持ち合わせていても、すべての人がモラル・ハラスメントを行うとはかぎりません。特に精神的にまだ未熟な人、挫折を経験したことのない人のなかには、尊大な態度で不用意に傷つけてしまうこともあるかもしれません。

また、もし自己中心的な部分があったとしても、相手のことを認める心があったり、少しでも他人と共感したいという気持ちがあれば、いずれ精神的に成長して、思いやりの心が育っていくこともあるでしょう。

しかしあなたの友人に、明らかに自己愛的傾向が強く、自己満足のためにあなたを支配し、利用しようとする人がいたら、早めに距離をおいたほうが賢明なこともあります。しがらみ上、どうしても抜け出せない関係の場合には、なるべく相手との精神的な交流を断つことで、自分を守っていくことも大切なのではないかと思います。

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フランスの精神科医、マリー・フランス・イルゴイエンヌが提唱した造語。外傷等が残るため顕在化しやすい肉体的な暴力と違い、言葉や態度等によって行われる精神的な暴力は、見えづらいため長い間潜在的な物として存在していたが、イルゴイエンヌの提唱により知られるようになる。

モラルハラスメントを起こしやすい人格

イルゴイエンヌによれば、自己愛性人格障害(自分の事にしか関心が無く、特別な存在だと思い込む)の傾向がある人物は、モラルハラスメントの加害者となりやすい。加害者となった場合、自分が精神的な暴力を振るっていると言う自覚は無く、そのため是正が難しい。

http://www5a.biglobe.ne.jp/~with3/gyakutai/morahara/morahara.htm