富裕層向けビジネス

 じゃあどうやったら富裕層を相手にうまくビジネスやれるかっていう話だけど、我々自動車を扱う仕事っていうのは、「お客様って結局は人に付く」ものなんですよ。飲食関係のビジネスをやっている人に聞くと7割くらいが人に付くって言うけど、自動車なんかもっとそういう特性があるんです。お客様が気に入ると、「この営業マンからしか車を買わない」とか、「担当を替えるな」とかよくありますよ。

 うちのお客様でポルシェを探していた方が、「ごめん、南原さん今回は浮気しちゃった」って来ましてね。で、何を買ったか聞くと、ホンダのオデッセイを買っちゃったって。散々打ち合わせをしてポルシェのこの仕様はああだこうだって細かく言っていた人が、気晴らしにホンダに行ったら新人の店員さんがすごく良かったからそっちを買っちゃったとかね。

 ああ、車はどれでもいいんだなって、結局はお客様は人に付くものなんだなって思いました。お金持ちの人ほど人に付いていく。当たり前のことなんだけど、もちろん会社に対する信頼感がなければ人にも付かないし。

 車を簡単に売るだけじゃ誰も信頼してくれないですよ。僕自身は、結構信頼されてる方だと思うんです。なぜかと言うと、例えばメルセデスを買いたいという方がいるなら、その方の知らない情報をたくさん提供します。

 「いま買ってもいいけど、あと1年後にはモデルチェンジしたのが出ますよ。それでもいま買いますか?」とかね、普通のディーラーが直前にならないと教えないような情報も教えてあげるんです。「そのオプション付けても、年に1回くらいしか使わないよ」とか、ただ売るだけじゃなく相手にとって有益だと思う情報を提供するようにしています。そういう体験を一度すると、もう他のディーラーからは買えなくなくなっちゃいますよね。長いお客様だと30年くらい付き合っていますからね、

 もう家庭の事情なんかもよく理解しているわけです。たまに奥様から電話が掛かってきて、「車こすっちゃったんだけど、旦那が帰ってくるまでに車を直して!」とかね(笑)。もうとりあえず板金屋に全部の仕事を中断させてその車を先に回せって言って修理させたりとか。もちろんその分コストはいただきましたけど、それはちゃんと見合った分だけのことでしたからね。旦那さんに見つからずに、私と奥様だけの秘密ね、なんて言って対応したこともありましたし。

 オートトレーディングはニヨンサンロクゴ(24365)部隊って言われているくらいですから。24時間365日動く準備ができてます。

 イギリスでもシンガポールでもアメリカでも、日本人の金持ちっていう感覚って諸外国の富裕層に比べたら何でもないんですよ。そのケタの違いをまず認識した方がいいですよね。日本なら高い車を持っているって言ってもせいぜい5000万くらいでしょう。海外に行ったら10億くらいのクルーザーを持っている層がいっぱいいるんだから。富裕層ビジネスって一口に言うけど、日本のマーケットの富裕層とリアルな世界の富裕層の定義の違いをまずは認識することが必要ですよね。

 もちろん日本にも大金持ちっていう人はいますけど、そういう人たちは表に出たがらないですよね。

 実は僕らもいろいろと手を打ったんですよ。DMも打ったし。パーティーをやったりとか。でもやっぱり一番多いのは紹介なんですね。

 いつも心掛けているんですよ、自分はどうしていきたいのかを。まずは踏み出す方向を決めること。それから踏み出すために体を前に傾けていること。それがきちんとできていれば、そういった出会いを掴めるんですよ。僕はよく引き寄せ力があるって人から言われるんだけど、本当に、必要な時に必要な人が来るんですよ。たまたまどっかの誰かにそれを言ったら、覚えていてくれた人が引き合わせてくれたりとかしますから。