タイ バムルンラート病院

世界の医療事情の一端を。

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 タイの医療セクターには、バムルンラート病院を含め、13の企業が上場している。1980年に設立されたバムルンラート病院は、89年にタイ証券取引所(SET)に上場している。

 バムルンラート病院の2007年の業績は、売上高が94億1300万バーツ(1バーツは3.2円で換算 約301億2160万円)、純利益が16億500万バーツ(51億3600万円)、時価総額235億バーツ(752億円)。ROE(株主資本利益率)は42%で、ROA(使用総資本当期利益率)が30.7%ある。

 バンコクドゥシットメディカルサービスは国内拡大路線に対し、バムルンラート病院は、顧客層を国内外の富裕層に絞るなど限定型の拡大路線を取っている。

 同病院は、年間に100万人以上の外来及び入院患者を受け入れている。このうち43万人は世界190カ国からの外国人患者が占めている。医師の数は歯科医師、非常勤医師を含めると900人に上る。病床数は554、1日に最大3500人の外来患者の受け入れが可能。

 病院に入るとホテルのようなロビーがあり、様々な国の人々が行き来している。特に911(米同時多発テロ)以降、欧米での先進治療を受けにくくなった、中東系の富裕層の姿が目立つ。

 この病院にはVIPルームと言われる病室がいくつもある。BHの関係者は常々、ライバルは5つ星ホテルだと語っている。病院内にスターバックス、マクドナルド、日本食料理屋、その他のレストランなどの店舗が出店し、どの病室からでもルームサービスを注文できる。

 患者本位に快適さと、便利さを追求していること、つまり単に体を治せばよいと考えているのではないことを感じさせられる。細かい気遣いのある、まさにサービス業の本来の姿をそこに見ることができる。

 病院が世界標準であるだけでなく、サービスやマーケティングも世界標準なのだ。米国の健康保険組合などが積極的に提携を求めてくる理由が分かる。単に医療費がタイの方が安いだけでなく、医療水準が世界レベルで高く、彼らの組合員が快適に過ごせる安心感がそこにはある。

 グループのCEOであるカーティス・シュローダー(Curtis J. Schroeder)氏は、米国でホテルチェーンの経営に20年以上携わっていた人物だ。

 経営のプロと医療のプロの明確な役割分担を強調した。「経営と医療は区分されているので、医師や看護師が医療に集中できる体制を整えている。患者はもちろん我々病院のお客様だが、同時に医師や看護師は我々マネジメントのお客様だ。この体制によって、医療に携わる人たちが経営などに惑わされず、患者に集中できる環境が整うのだ」ということだった。

 BHはここ数年で、フィリピンの大型病院を買収して子会社化し、ドバイには地元資本と共同出資して病院を建設している。こうした海外展開によって、初診は現地で、深刻な患者はバンコクでという体制が整い、運営の効率化が進み、また海外の富裕層を中心とした顧客層の拡大を実現している。

 一昨年にはアジア最大の腎臓移植ネットワークの会社を100パーセント子会社化し、拡大する移植医療でも対策を講じている。そのほかにも、美容、健康維持、アンチエイジングなどを手がける100パーセント子会社も保有した。

 ますます豊かになるアジアの人々はより安心で、高いレベルの、しかも快適な医療を求めて国境を越えて移動し始めるだろう。 自分の生命と健康のためなら、人々は国境を越える切実さを間違いなく持つだろう。

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医療コストは米国の8分の1、EU(欧州連合)の3分の1、シンガポールの2分の1というデータがあり、
だから、海外の富裕層を中心とした顧客層の拡大を目指し、実現しているらしい。

年間に100万人以上の外来及び入院患者。医師の数は歯科医師、非常勤医師を含めると900人に上る。病床数は554、1日に最大3500人の外来患者の受け入れが可能。売上高が94億1300万バーツ(1バーツは3.2円で換算 約301億2160万円)、純利益が16億500万バーツ(51億3600万円)。
病床数が少ないような気がする。すごく速く回転させているはず。外来は一日3500人として300日で100万人になる。100万人来たら、ひとり3万円で300億円だ。
医師がいろいろ含めて900人というが、ナース、事務職、ホテル経営から移ってきたCEOなどの給料を推定すると、医師400人で2000万円として概算すれば80億円。事務、ナースはいろいろあって、人数も多くて、100億円くらい。医師とかナースは専門職になると英語圏でもっと給料のいい病院に就職できるはずなので、かなり条件をよくしないと定着しないだろう。
タイの物価に比較すれば大変な高額所得者だが、お金だけあっても、遊べないし、教育もできないし、コンサートもないところでは、報われない。専門職の定着率は悪いと思う。

米国の健康保険組合などが積極的に提携を求めてくるというのだから、複雑。
東京の人が埼玉の病院に入院させられても、看病とかいろいろあるのに、
健康保険組合からタイで手術を受けなさいと言われたら飛行機ではるばる出掛けるのだろうか。
アメリカの富裕層はしそうにない。医療コストは米国の8分の1というから、困っている人は行くだろう。
飛行機代を考えれば、しかも手術が必要な病身であることを考えれば、ちっょとためらうだろう。
万が一、死の瞬間には家族と、いつもの牧師さんに、そばにいてもらいたいと思うだろうから。

日本でも徳洲会グループがシンガポールに高度医療センターをつくり富裕層を呼び込もうと計画していたが、どうなっただろうか。
シンガポールユニバーシテイ-ホスピタルは4分の1の患者さんを海外から受け入れているとのことで、高度医療を安価に提供する素地が東南アジアにはある。
田中角栄元首相の肝煎りでできた中国北京の中日友好病院という話を聞いたこともあるが、
最近の中国のどこかに駐在している人の話では、上海まで行けば日本人の医者もいるとのことだった。

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ライバルは5つ星ホテルだと書いた直後に、
病院内にスターバックス、マクドナルド、というのだから、
5つ星の程度が分かる。

日本でも、加賀屋旅館や玉の湯旅館と組んでホスピタリティを追及する人がいてもいいが、
何しろ人件費が高すぎるし、設備が高すぎて、回収できないのだ。
東芝のMRIなどには国から補助金が出るからとりあえず買うけれど、それでもまだまだ高い。
品川の東芝病院はさすがに自分のところの病院だけあって、最新鋭の機械をそろえている。

土地と人件費の安いところ、交通の便がいいところ、法律の厳しくないところ、そして他にめぼしい産業のないところ、
そんな風にして株式会社病院の「出店」場所は決まる。こんな
ものができるということが逆に何か悲しいことを物語っているのだ。

かつて日本にも高級病院はあったが、ナースが集まらず、行き詰まり。
医者としては富裕患者だけを相手にする医者という自己像にも耐えられない。
わがままを絵に描いたような人たち。

しかし、最近は、わがままを言えるような立場ではないのに、平気でわがままをいう人の増えたこと、
とある人が嘆いていた。デパート関係の人だ。